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機動戦士ガンダム
逆襲のシャア

1988年、サンライズ、富野由悠季原作+脚本+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

宇宙世紀0093、ネオ・ジオンの総帥になったシャア・アズナブル(声-池田秀一)は地球を寒冷化させるため隕石落としの作戦を進めていた。

その頃、地球では、政府高官アデナウアー・パラヤ(声-嶋俊介)が素行の悪い娘クェス・パラヤ(声-川村万里梨阿)と妻を連れて、スペース・コロニーのロンデリオンに避難するため民間シャトルに乗る手続きをしていた。

しかし、我がままな妻は地球に残ると言い出し勝手に帰ってしまったので、アデナウアは残ったチケットで、偶然近くにいたミライ・ヤシマ(声-白石冬美)とブライト・ノア(声-鈴置洋孝)の長男ハサウェイ(声-佐々木望)をシャトルに乗せてやるのだった。

やがて、小惑星フィフス・ルナはチベットへ落下、地球は若干、寒冷現象が始まり出す。

アデナウアーらを乗せた民間シャトルは戦闘に巻き込まれ、地球連邦軍の戦艦に避難、そこでハサウェイは独立部隊ロンド・ベルに所属している父親ブライトと再会する。

そこで、伝説のアムロ・レイ(声-古谷徹)と出会ったクェスは、彼に興味を持つが、アムロの傍らに常にいるチェーン・アギ(声-弥生みつき)に邪魔をされていると嫉妬心を露にする。

その頃、アデナウアーはシャアらと極秘裏に接触、ネオ・ジオンの武装解除を条件に小惑星アクシズをネオ・ジオンに明渡すと和平交渉を交わしていた。

シャアの本当の目的は一つ、そのアクシズを地球へ落とす事だった。 地球を完全に寒冷化するには、もう一つ隕石を落とさなくてはならない事をシャアは知っていたのだった。

会議後、乗馬に出かけたシャアは、折からジープで通りかかったシャア、クェス、ハサウェイと遭遇、クェスはたちまち、シャアの言動と魅力に取りつかれ、助けにやって来たギュネイ・ガス(声-山寺宏一)の機にシャアの誘いのままに同乗する事になる。

この恐ろしいほどに無邪気なクェスに、ニュータイプの素質を見い出したシャアは、ララァの身替わり用兵器として実戦に送りだす事にする。

しかしクェスは、又しても、シャアの傍らに絶えずいる戦術士官ナナイ(声-榊原良子)に強いライバル心をむき出しにする。
クェスの思いはシャアを独占し、甘える事だけ。

もう、自分の事を気にかけているらしきギュネイや、後に自分を救出にやってくるハサウェイの言葉など、ニュータイプとして覚醒し、完全に心を閉ざしてしまったクェスの耳には届かなくなっていた…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

「機動戦士ガンダム」の後日談の形をとった完全オリジナル劇場用作品である。

作品内で多少過去の説明はなされているから、全くの初心者でもぼんやりとは人間関係などを理解する事は可能だと思われるが、やはり初期のガンダム世界を多少なりとも知っていないとついていけない部分がある。

基本的には「ガンダム」テレビシリーズおよび、そのダイジェスト版とも言える劇場用三部作を観ている層をメインターゲットにしている作品だと思う。

大人たちがはじめた戦争に否応無しに巻き込まれて行く子供達の苦悩を描いた初期ガンダムの世界と同様、ここでも戦争に巻き込まれてしまうクェスやハサウェイが登場する。

しかし、彼らは精神的にひどく幼く描かれており、そこに素直に感情移入する事は難しい。

どちらかというと「子供だな」と、つい大人の目線で観てしまう。

つまりこの作品では、最初のガンダムのアムロやシャアらに感情移入したファンの成長に合わせるように、作者の目線も大人になっていると言う事だ。

この「大人の目線」から観たガンダム世界が、どうしても「どこか醒めた世界」である事は否定できない。

特に、シャアの大人びた外観や計算高い人間関係の部分と幼いままの思想のギャップは、ますますいびつなものに見え、その痛々しさに同情すらしたくなるほど。

それが作者の狙いなら、その意図は充分に伝わってくる。

他方、アムロの方も、醒めた子供ではなく、普通の大人になっているように見える。

これでは、彼らの対決自体、彼らがかつて巻き込まれた「大人の勝手な争い」の世界を自ら繰り替えしているに過ぎない。

そこに観客を奮い立たせるものはない。

とはいえ、これはこれで全く見るべき所がない訳でもなく、メカアクションなどの部分では、普通に楽しめる作品にはなっていると思う。

かつて子供だった世代が、旧友との久々の再会に、懐かしさと同時に、どこか大人びてしまった相手に自分を投影して一抹の寂しさを覚えるような、そんな映画であるような気がする。