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銀座カンカン娘

1949年、新東宝、中田晴康+山本嘉次郎脚本、島耕二監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

落語家を引退した新笑(古今亭志ん生)師匠の家には孫娘のヒヨ子(服部早苗)の他に、甥の武助(灰田勝彦)、さらに、師匠が昔世話になった男の娘で画家の卵の春(高峰秀子)、さらにその友人で音楽家志望の秋(笠置シヅ子)まで二階に居候していた。

最近では、師匠が拾って来た犬のポチさえも武助が可愛がるようになり、そのエサ代だってバカにならないので、ただでさえ家計のやりくりに苦労している新笑の女房おだい(浦辺粂子)は渋い顔。

ところが秋と春には全く収入がなく家賃が払えないどころか、秋など着る服さえ持たない始末。
貯金たって、たったの一銭。

そんな中、春はおだいからポチを捨てて来てくれと頼まれ、渋々外を歩き回るが、どうしても捨てられない。

そんな彼女に突然声をかけて来たのは、近くで映画の撮影をしていた大和映画の助監督らしき人物。

たまたま、女優の山田ミエが歩くシーンで犬が必要なので、ポチを貸してくれと言う。
さらに、そのポチが撮影が始まるとちっとも動かないので、春も一緒に出てポチを歩かせてくれと言う。

その内、女優があるシーンでだだをコネだし、その代役に急遽女性の代役が必要と聞いた春は秋を連れてくる事に。

ところが、秋が代役をやらされたのは、男優に池に突き落とされるシーンだった。

とにもかくにも、その映画出演で千円と濡れた衣装を貰って喜ぶ春と秋だったが、エキストラとして参加していた白井哲夫(岸井明)から、自分は銀座で音楽を一曲やって千円から五千円は稼げるので、その仲間にならないかと話を持ちかけられる。

芸術家としてのプライドもあって、酔客相手の商売に最初は躊躇した二人だったが、後日、家に遊びに来た白井のさらなる要請もあって、思いきって参加してみる事にする。

最初は失敗もあったが、コツコツ努力する内に十日で3万円も稼いだ二人、居候をしている師匠が大家から月末までに十万円払えなければ家を明渡せと迫られている事情をヒヨ子から聞かされ、奮起する事になる。

一方、武助の方は会社で合唱隊のリーダーをやっていたのだが、その会社が近々吸収合併される事になり、自分の首も合唱隊の将来も危うい事が分かってくる…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

貧困の中、夢を持ちながらも、何とか現実にも対応して前向きに生きようとする若者たちの姿をユーモラスに描いた音楽映画。

他愛のない内容と言ってしまえばそれまでだが、その他愛のなさが心地よい。

笠置シヅ子の体当たりコメディエンヌ振りも、彼女に臆する事なく歌う高峰秀子も共に愛らしい。

映画そのものは、銀座のセットが目立つくらいで、全体的に低予算の小品といった印象なのだが、物がなかった時代には、劇中に登場する明るい歌だけでも十分に夢と勇気を与える内容だったのだろうと想像される。

新笑師匠の家の周りが本当に田んぼばかりで何もなかったり、風紀が悪かった当時の銀座の様子などが興味深くもある。

貧乏な春と秋の貯金が一銭しかなく、これでは何も買えないと嘆くシーンが冒頭にあるのだが、昔は一銭でもお腹いっぱいになり、かつ映画まで観れたとか、映画のエキストラのギャラが一人300円、スタントまでやらされた秋と春の出演料が合わせて1000円などという当時の物価も興味深い。

ブギの女王といわれた笠置シヅ子や灰田勝彦の歌うシーンも貴重だが、何と言っても本作の目玉は、名人五代目古今亭志ん生の落語が聞けると言う所であろう。

さすがに、小咄とかサワリの部分だけではあるが、映像と共に残っているのがすごい。

春と秋たちが歌う銀座のキャバレーの名前が「ファンタジア」というのも洒落ている。
ひょっとすると、ディズニーの同名のアニメタイトルから頂いたものであろうか?

大ヒットした主題歌の「銀座カンカン娘」には、「カルピス」という商品のコマーシャルのような文句が出てくるのだが、当時は、最先端のおしゃれな飲み物だったのだろう。(ただし某公共放送では放送禁止かな?)