TOP

映画評index

ジャンル映画評

シリーズ作品

懐かしテレビ評

円谷英二関連作品

更新

サイドバー

白夫人の妖恋

1956年、東宝+ショウ・ブラザース、中国民話+林房雄「白夫人の妖恋」原作、八住利雄脚本、豊田四郎監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

宗の時代、両親の墓参のため、湖を船で渡っていた許仙(きょせん-池部良)は、突然の雨に船を呼び止めた二人連れの女性と相乗りになる。

身分の高そうな女性は白娘(ぱんやん-山口淑子)、その召し使いは小青(しょうせい-八千草薫)といい、白娘の美しさに心惹かれた許仙は船を降りる際、自分の傘を二人に貸して、翌日屋敷に取りにうかがうと言って別れるのだった。

許仙は、姉(清川虹子)とその亭主の公(田中春男)が経営する薬屋の番頭として、貧しい居候暮しをしていたのだが、こっそり姉の着物を借り受けてそれを着ると、傘を返してもらうため、前日住所を聞いていた屋敷を訪れるのだが、そこは牡丹の花が咲き乱れる豪勢なお屋敷だった。

白娘と再会し、しばし会話を交わす内に、彼女の一方ならぬ許仙への思いが伝わって来たのだが、貧乏な許仙に彼女と交際する勇気はない。

それを察した小青は、帰り際の許仙に結婚資金として銀を与え、奥様と結婚してくれと頼むのだった。

その頃、市中では、お上の蔵から500両の銀が何者かに盗まれたので、心当たりの人物を知らせたものには銀50両を懸賞金として与えると言う札が立てられる。

許仙が結婚資金として持っていた銀に、立て札に記されていた刻印を発見した公は、賞金欲しさに役人に甥の事を密告してしまう。

最初はそんなに拷問されても、銀の提供者の名前を明かさなかった許仙だったが、結局、あの屋敷の事を話し、役人たちがそこへ踏み込むのだが、不思議な事にその屋敷は廃虚同様の有り様で、独り残っていた白娘も、役人たちの前から煙のごとく姿を消してしまうのだった。

やがて許仙は蘇州へ送られる事になるのだが、役人への鼻薬が効いたのか、牢に入れられる事は免れ、その地に住む王明(上田吉二郎)の経営する宿の番頭として働く事になる。

しかし、その宿にも突然、白娘と小青が現れ、再び許仙への熱い思いを伝えたため、最初は拒絶していた許仙も、とうとう白娘と結ばれる事になる。

王明からの借金で、白娘と結婚した許仙は薬屋を始めるが、商売はなかなかうまく行かなかった。

そんなある日、祭りの町に出かけた許仙は、茅山道人(東野英治郎)という不思議な老人に呼び止められ、お前には妖魔が取りついているといきなり告げられる。

小青からの報告で、許仙が自分達の正体に気づいたと知った白娘は、小青に近くの川や井戸に毒を撒かせ、わざと病気をまん延させて、この薬屋を繁昌させろと意外な事を命ずるのだった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

東宝が国内ではじめてブルーバックを使い、カラーで撮った特撮ファンタジー。

基本的には、この2年後に東映動画が作ったアニメ「白蛇伝」(1958)と同じストーリーである。

作品自体は、昔、2度ほどテレビで観た事があるのだが、スクリーンで観たのは今回が始めて。

フイルム状態が良かった事もあり、その眼のさめるような美術の美しさに改めて感心させられた。

中国の情景は、ジオラマと屋外セットによって再現されている。

動物キャラなどを加え、全体的に優しい娯楽タッチでまとめられていたアニメ版と違うのは、白娘と許仙の恋の駆け引きがより濃厚に描かれている事。

特に、白娘が魔性の存在と分かった後の二人の心の葛藤、あくまでも、許仙への愛を全うしたがる白娘の執念と、それを受け入れるべきか否かを苦悩する許仙の姿が執拗に描かれている所が見所。

愛憎背中合わせのその互いの心の駆け引きには、周囲の人間も付いていけなくなる闇の部分がある。

途中までは白娘の忠実な召し使いかつ良き理解者であり、かわいらしく純真な少女と言うイメージだった小青が、途中から大人同士の愛を理解できなくなり、白娘と対立するようになってしまうのもそのため。

茅山道人(東野英治郎)や、金山寺の高僧、法海禅師(徳川夢声)の法力を持ってしても、その闇を解決する事は出来ないのだ。

円谷英二の手になる得意の水を使った特撮スペクタクルもあるが、基本的には大人の男女の心理劇に近く、子供向けの特撮ものとははっきり一線を画している。

昔、観た時は、ただ退屈な内容だと言う印象しかなかったが、今、大人の目線で観てみると、男女の愛の底知れぬ深淵が象徴的に描かれているようで、それなりに興味深かった。

ファンタジーらしく、美男美女の主人公たちも見物だが、小青を演ずる八千草薫さんのかわいらしさは絶品というしかない。