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ある日わたしは

1959年、東宝、石坂洋次郎原作、岡田達門+井手俊郎脚本、岡本喜八監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

東京の洋裁学校で勉強中の城山ゆり子(上原美佐)は、同郷で中学時代からの付き合いがある矢吹健次郎(山田真二)から、300円払えば腹一杯ごちそうが食べられる県人会に参加しないかと誘われ出かけることにする。

しかしその会では、代議士、花島新吉(上田吉二郎)やその秘書の北村(田島義文)の露骨な挨拶があり、彼らが帰った後、集まった客の中から金子大助(宝田明)という一人の医大生が立ち上がり、この会は明らかな選挙運動だと思えるが開催者はそれを承知で行ったのかと発言をする。

実はゆり子もそう感じていたので、同感の挙手をする。

これに対し、健次郎が立ち上がり、そうだとしても、政治家の思惑を利用するだけ利用して、選挙の時には、自分の好きな候補に投票すれば良いだけではないかとの反論をするが、大助にさらに言い返されるはめに。

その後、生意気な大助を痛めつけてやろうという、よからぬ相談話を女子トイレで偶然聞いてしまったゆり子は、初対面の大助を強引にせかして、その場を逃げ出す事にする。

ゆり子なら先に帰ってしまったと、やはり同郷の女子大生、川村秀子(水野久美)から聞かされた健次郎は、彼女に誘われるまま飲みに出かけるが、ゆり子の事が好きな彼は、独りゆり子の部屋で彼女の帰りを待つ事にする。

深夜、ビアホールで意気投合したゆり子と大助が揃って御帰還、部屋で彼らと出くわした健次郎は、県人会の席で言い負かされただけでなく、片思いだとは言え、自分の彼女を取られた事に逆上し帰ってしまう。

そんな傷心の健次郎に優しく近づいたのが、彼の事が好きだった川村秀子、彼らはいつの間にか結ばれてしまう。

一方、気まずい状態になった健次郎の事を気にしながらも、ゆり子は大助と付き合いはじめ、恋する喜びを知るようになるのだが、久々に帰郷した倉敷の実家で、大助の名前に驚いた母親(三宅邦子)の態度に、何やら女としての不安を感じるようになる。

ゆり子は、弁護士をしている父親(宮口精二)を、母親が本当に愛しているのだろうかと、かねてから疑問を持っていたのだった。

その後出会った、大助の医者をやっている父親、金子勇作(上原謙)も、初対面のゆり子に対し不可解な発言や態度を見せるに至り、ゆり子は、大助の父親と自分の母親の過去にますます疑念を抱くようになっていく…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

いかにも、石坂洋次郎ものらしく、はっきり物を言う現代女性がぶつかる現実への苦悩が描かれていく。

主役を演じる上原美佐は、黒澤明の「隠し砦の三悪人」(1958)の雪姫役で有名だが、この作品がおそらく、唯一の主演作ではないだろうか。

彼女はこの後、岡本喜八監督作品では、「独立愚連隊」(1959)と「大学の山賊たち」(1960)に出演しているが、共にさほど目立つ役ではない。

そんな上原美佐が、この作品では魅力的かと言われれば、かなり微妙なものがある。

この人美人顔で、笑うとかわいらしい人なのだが、基本的に表情が固いと言うか、何か、かなり緊張して芝居をしているような雰囲気がセリフや演技から伝わって来て、今一つ、親しみにくい印象がある。

もともと器用なタイプの人ではなかったのだろう。

懸命に演じている姿は伝わって来るが、周りの役者達が達者なので、どこか浮いて見えてしまう所があるのだ。

とはいえ、女優としては短命だったこの人の貴重な姿が観られるのは、やはり貴重。

彼女の兄弟役として登場するのは、元スリーファンキーズの手塚茂夫と、星由里子。
星由里子の方は、ちょっと見、誰なのか分からないくらいあどけない。

基本的に生真面目な青春文芸物だが、ラスト、三宅邦子が泣かせる。