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夜霧の決闘

1959年、宝塚映画、松浦健郎脚本、井上梅次脚本+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

夜の東京港、客船を使った海上ダンスホールでダンスを楽しんでいたアベックたちに、ボーイが11時半の閉店を知らせていた。

しかし、独りそれに逆らって11時50分まで粘っていた男(鶴田浩二)がいた。
キザな事に、その男はバンドマンが使用していたトランペットを借りて、美しいメロディを巧みに奏ではじめる。

12時きっかりに竹芝の倉庫に現れたその男は、村上興業の社長相手に取引を始める。

しかし、その取引は突然侵入して来た二人の暴漢によって邪魔されてしまう。
村上興業の人間5人を射殺したサングラスとマスクで顔を隠した暴漢たちの正体に、神戸からやって来たというその男は気付いたようだった。

だが、男も二人組からは逃げおおせず、拳銃の弾を何発もくらって深夜の海に落ちてしまう。

気付いた時、男は警察病院のベッドに寝かされて、刑事の尋問を受けていた。
しかし、男は何も覚えていなかった。

医者の説明では、彼は記憶喪失になったらしいという。

麻薬絡みの抗争だと推測した警察だったが、1ケ月過ぎても事件解決にはなんの進展もなく、来ていた洋服が神戸の店のものであった事から、男を神戸の人間に違いないと推測し、退院した男を泳がせてみる事にする。
神戸の麻薬組織には「ゼロ」と称される謎の大物がいるらしいのだが、その正体を探る意味合いもあった。

自分の過去を知るために、自然と神戸に向った男は、何となく見覚えのある港で、突然の胃痛を起こした女を住まいまで送ってやる事に。

彼女は、「バー 静江」のママ、静江(淡路恵子)といい、かつての恋人だった南ケンジというヤクザに似ている男を、用心棒代わりにこの店に住んでくれないかとくどきだす。

実は彼女は、兵庫県警の的井警部(内田朝雄)からの依頼で男に近づいていたのだが、次第に男の優しさに惹かれていく。

そんな男に近づいてきたのは、「殺し屋」だと自称する謎の男(三橋達也)。

さらに、かつての男の恋人でモデルの扇圭子(雪村いづみ)、その圭子の今のカレシで歌手の山手一郎(神戸一郎)、圭子の父親が束ねている扇組の辻村(高松英郎)、中西(丹波哲郎)らが出現してくるのだが…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

記憶を失った男が自分の過去探しをする内に、意外な自分の正体を知る事になる…というアイデアは、サスペンス物等に良くある設定で、特に目新しい印象は受けないが、当時としては斬新だったのだろう。

主人公が特定の光の色に反応を示す…という辺りも、何やらヒッチコック風。

あちこちからアイデアを借用して一本の映画にしているような感じもするが、それなりに面白い娯楽作品になっている。

下らない事だが、本作で一番びっくりしたのは、内田朝雄の頭髪がある事。

オールバックにしたその髪はふさふさとはいい難いが、頭髪がある内田朝雄ははじめて観たような気がする。

中国人を演じている森雅之、その情婦を演じている環三千世というのもちょっと珍しい。

三橋達也、高松英郎、丹波哲郎らは、当時としてはお決まりの役柄といった所。

劇中で、鶴田が絶えず吹いている口笛の元になっている歌を歌う歌手神戸一郎は、この作品が専属第一回作品だったらしいが、当時はまだいかにも可愛くあどけないアイドル顔で、今となっては貴重な映像だろう。