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若い娘たち

1958年、東宝、石坂洋次郎「霧の中の少女」、井手俊郎脚本、岡本喜八監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

洋裁と下宿経営で5人の娘を育て上げて来た柴田美保子(三宅邦子)は、末っ子の高校生タマ子(笹るみ子)が持って来た郵便物を開封してみる。

中身は三女の結婚写真であった。

柴田家の上の三人娘は、すべて下宿人だった男性と結婚したことは町内でも知れ渡っており、また新しい下宿人を募り、自分と結婚させたがっている母親の見え透いた魂胆に、四女のカナ子(雪村いづみ)は大いに反発心を抱いていた。

しかし、そんな柴田家にやって来た新しい学生は、候補者三人のジャンケンの結果選ばれた、東海医科大学の婦人科を勉強中の優秀でハンサムな川崎光夫(山田真二)であった。

若い娘としては嬉しい誤算にちょっとときめく胸の内とは裏腹に、カナ子は川崎に対し、自分は母親の策略のままに結婚相手を決めるなんて我慢できないので、絶対自分に恋心など抱いてくれるなと言い渡してしまう。

一方、美保子の兄で、今は柴田書店の養子になっている主人(加東大介)は、妻(沢村貞子)と一緒に、カナ子と同い年の娘、澄子(野口ふみえ)の結婚相手の事で気をもんでいたのだが、川崎のハンサム振りに憧れた澄子もその気になり、柴田書店でも下宿人を募ることになる。

その結果、やって来たのは、最初の柴田家への候補者の一人だった、ヒゲ面もむさ苦しい橋本(桐野洋雄)という汚い学生だった。 期待外れの結果に落胆する澄子。

そんなカナ子や澄子と友達の野村友子(水野久美)は、タマ子の同級生で仲良しの大チャン(高嶋稔)の姉であり、東海医科大学の野村教授(上原謙)の娘でもあり、川崎とは同級生の関係でもあったのだが、自分達三人は、決して、身近で下品な男に妥協して恋などしてしまうことなどがように気を付けようと互いに誓いあうのだった。

ところが、ある日、ヒゲをそった橋本が意外にハンサムであることに気づいた澄子は、母諸共、急に彼の事を気に入ってしまい、あっさり、結婚することに。

さらに、以前から、川崎に秘かな恋心を抱いていた友子も、学園祭で行われるテニスの試合で川崎とペアを組むことになり、急に張り切り出す。

そんな澄子や友子の輝く姿を見せられたカナ子は、自意識過剰のために川崎に対し素直になれないまま、一人、取り残されている自分に気づく…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

一応この作品、1951年の千葉泰樹監督「若い娘たち」に次ぐ2度目の映画化作品とされているが、原作の名は石坂洋次郎「霧の中の少女」と出てくる。

だとすると、「くちづけ」(1955)という中編集の中の一本としても映画化されており、本作は3回目の映画化なのではないだろうか。

川崎役の山田真二は、この当時のアイドルものなどに良く登場していた甘いマスクの二枚目。

下宿の候補としていつも参加するものの、毎回ジャンケンで負けてしまうリーゼントヘアの学生、田中を演じているのはミッキー・カーチス。
学園祭のシーンでは「たけのこロック」という奇妙な歌をウエスタンスタイルで披露している。

水野久美がバンプ役ではなく、真面目な医大生をやっているのも珍しい。

外科手術をする上原謙というのも珍しく、ブラック・ジャックを演じた事もある息子の加山雄三と、親子二代で外科医の役を演じていたことになる。

特撮嫌いといわれているらしい岡本監督だが、この作品では、雪村いづみに「私たちは絶対に、ゴジラやラドン(のような男)とは恋をしないこと」などと言わせているし、学園祭の仮装大会のシーンでは、「地球防衛軍」(1957)のミステリアン(おそらく、本物の衣装ではないか)の格好をした学生が登場している。

身体が接触するシーンになると、奇妙な効果音を重ねたりする遊び心が、いかにも岡本監督らしい。

全体的に大人しい印象の作品ではあるが、基本的に原作がしっかりしているので、安心して楽しめる作品になっている。

最後にちらりと登場する宝田明にも注目。