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二階の他人

1961年、松竹、多岐川恭原作、野村芳太郎脚本、山田洋次脚本+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

とある雨の日、駅まで傘を持って夫の葉室正巳(小坂一也)を迎えに来た新妻の明子(葵京子)は、新居の二階を貸している小泉久雄(平尾昌章)に、傘を一本貸してしまう。

やがて帰って来た正巳の後ろには、間が悪い事に、近所に住む上司の部長(須賀不二男)の姿。

事情を知らない正巳が気を使い、残った傘を部長に貸してしまったから、二人は帰るに帰れなくなる事に。

新居のすぐ近所に、煙たい部長の家がある事に気づいたのをはじめ、葉室夫婦は付いてない。

借金をして建てた家のローンを払うためには、どうしても二階を人に貸して家賃を取るしかないと、今の小泉とバー勤めをしているその女房(関千恵子)を入れたは良かったが、その小泉夫婦、3ケ月経っても、一向に家賃を払う様子がない。

業を煮やした正巳が催促に行くと、全学連時代、警察沙汰を起こした久雄の事を密告するものがいて、前の仕事を首になってしまい、いまだに次の仕事が見つからないのだという。

同情はするものの、さりとてこのまま家賃未納が続くのはたまらないと、正巳は部長に頭を下げ、縁故採用の口で倉庫の守衛の仕事を久雄に紹介するのだが、その後も小泉はさっぱり仕事に身を入れる様子もない。

そんな葉室家に、突然、豊橋の長男の所にいたはずの正巳の母親(高橋とよ)が、あちらの嫁と喧嘩をしたとかでやって来てしまう。

この母親がまた下品で、四六時中、花札をする事しか楽しみがないような女。

たちまち、二階の小泉夫婦と仲良くなってしまったから始末に悪い。

困り果てて、近所に住む警官(山本幸栄)に相談にいった所、間借り人を追い出す有効な手段はないらしく、ちょっと力づくでやるしかないだろうとのアドバイスを受けた正巳は、勇気を振り絞って実力行使、ようやく小泉夫婦は出ていく事になる。

次に間借をしたのは、来島泰造(永井達郎)という評論家とその妻洋子(瞳麗子)夫婦だった。

二人はかなりの金満家らしく、大きな冷蔵庫やステレオを運び込んで来たばかりか、葉室家に内風呂がないので、10万出すから作ってくれないかと頼まれる始末。

そんな所へ、再びやって来たのがあの母親。

長男(野々浩介)、次男(穂積隆信)もやって来て、三人兄弟の誰が母親の面倒を誰が見るかで相談の結果、長男が今のまま自分の所に連れて帰るが、その代わり、この家を建てる時に貸した20万円を正巳に返せと言い出す。

そんな余裕があるはずもなく、困り果てた正巳に、明子が二階の来島に相談してみたらどうかと言い出し、頼んでみたら、あっさり20万円借り受ける事ができた。

ところが、ある朝、満員電車に揺られていた正巳は、人が呼んでいた新聞に来島夫婦の写真がでかでかと載っているのを発見する。

何とあの二人、500万円もの拐帯犯人として指名手配されていたのであった。

二人から借りた金を急に返す当てもなく、困り果てた正巳と明子は、しばらく二階の二人の事を黙っておき、それとなく様子を見る事にするのだったが…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

山田洋次初監督作品で、当時、併映用に作られていたシスター・ピクチャー(SP)という、1時間程度の小品である。

監督としての腕慣らし的な意味合いで作られた試作と見るべきかも知れない。

基本的に、一件の家を中心に起こる軽い悲喜劇とちょっとした心理サスペンスを描いた低予算のホームドラマで、特段、面白い!…という程の物ではないが、テレビドラマでも観ているつもりでいれば、それなりに何となく最後まで見てしまうような内容。

「マイホーム生活はつらいよ」とでもいった所であろうか。

夢を持って建てた家が、新婚の二人をどんどん心理的に追い込んでいく皮肉が面白いといえば面白い。

今観ると、二階の間借人に関してはかなり嘘臭い設定に感じる(一組だけならまだしも、二組も連続して変な間借人が続くという所、特に来島夫婦に関しては、どう考えても最初から不自然な点が多すぎる)気になるが、当時としては、最初の小泉夫婦などは良くあるパターンだったのかも知れない。

母親を押し付けあう兄弟同士のエゴのぶつけ合いのシーンなどはリアルである。

その母親がいかにも人から嫌われるように描いてあり、観客もつい兄弟たちに同情してしまう所などはうまい。

肉親が嫌な人間というのが、一番厄介だからである。

ひょっとすると、この母親のキャラクターが、後の寅さんに反映されているのかも。

主役を演じている小坂一也に加え、平尾昌章まで出ていて、ちょっとしたウエスタンアイドル映画といった雰囲気も(小坂一也はワゴン・マスターズ、平尾昌章はチャック・ワゴン・ボーイズという各々バンドの出身)。