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結婚のすべて

1958年、東宝、白坂依志夫脚本、岡本喜八監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

世は正にセックス情報に溢れ、若い女性の性に関する感覚も昔とは様変わりした現在。

兄、土井甲一郎(堺左千夫)の結婚式に遅刻した康子(雪村いづみ)は、新劇の研究生でありながら、バイトで雑誌のモデルもしている女子大生。

恋愛や結婚に関しては、自分なりの理想を抱いており、情熱のない見合い結婚をした兄や、現在同居している姉、啓子(新珠三千代)をちょっぴり軽蔑していた。

そんな康子が結婚式の帰り、銀座の喫茶店で啓子に紹介したのは、雑誌「近代女性」の編集長、古賀(三橋達也)とモデルの志摩京子(白石奈緒美)。

古賀は初対面の啓子の美貌に釘付けとなり、今度、雑誌で妻としての理想の体型である「ホームボディ」を取り上げるが、そのモデルになって欲しいと言い出すが、保守的な啓子は固辞する。

啓子の夫、垣内(上原健)は大学で哲学の教授をやっているのだが、これまでに6回も博士号を取り損なっているような要領の悪い所があった。
家庭でも大人しいだけで、妻に対しても関心がある風でもなく、そんな垣内の態度に、啓子は女として常々少し不満を感じないでもなかった。

その垣内のクラスに、中川(山田真二)という甘いマスクの優秀な学生がおり、時々、家にも遊びに来ていたのだが、ある時、康子は、古賀との待ち合わせで出かけたバー「パット・ブーン」という店でバイトをしている彼を発見する。

その店では、同じ新劇仲間のユミ(森啓子)も働いていた。

康子は、ハンサムで頭も良く、恋愛や結婚観でも自分と相通ずる考えを持っている中川を気に入り、デートを重ねる内に唇を交わす仲になるが、ある日訪ねた彼の下宿先で、そこの大家の娘で不良のマリ子(団令子)と中川はただならぬ仲であることに気づきショックを受ける。

一方、度重なる古賀からの誘いを断わりつづけていた啓子だが、金の無心で訪ねた祖父(小川虎之助)からのアドバイスもあり、殻に閉じこもっていた今までの考えを反省し、思いきって古賀と行動を共にしてみることにし、新しい時代の感覚を積極的に学んでいくことになる。

さらに、そんな自分の行動を理解してくれた夫の度量の深さを知った啓子は、彼との結婚生活が決して間違っていなかったことを悟るのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

岡本喜八監督の第一回作品。

ドライで積極的な考え方の妹と、保守的な生き方を選択した姉を対比させることで、女性にとっての本当の恋愛、幸せとは何なのかを問いかける内容になっている。

ストーリー自体もなかなか面白いのだが、本作には古い東宝映画ファンにはたまらないシーンがいくつも登場するのが嬉しい。

まず、出演者の豪華さ。

御国訛りも抜けないドン臭い大学教授を演じている上原謙も珍しいのだが、何と、三船敏郎も新劇学校の演出家として、さらに仲代達矢が、祖父が康子の結婚相手にと考えているほどのエリート社員として登場している。

新劇の研究生として中丸忠雄、山本廉、化粧品セールスマンとして藤木悠、若水ヤエ子、「パット・ブーン」のママは藤間紫、そこの客として田崎潤などが次々に顔を見せてくれる。

さらに、学生役として登場する加藤春哉、石井伊吉(現:毒蝮三太夫)、佐藤允などのキスシーンがあるのも貴重。

加藤春哉は、後の怪獣映画などに登場する個性的な脇役として、当時の子供達に顔を覚えられた人である。

いつもは、典型的な二枚目役が多い山田真二が、この作品で意外なキャラクターを演じているのにも驚かされた。

セックス情報の氾濫を皮肉まじりに描く冒頭部などに、岡本監督特有のユーモアセンスを感じるのをはじめ、映画ファンには見所の多い作品である。