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群盗南蛮船

1950年、新東宝、三村伸太郎脚本、稲垣浩監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

風見鶏がクルクル廻っている。 これは愛情の風…。

そんな風が吹く南の国に、異国の香のする 「ぎやまんの宿」と呼ばれる宿屋があった。

そのぎやまんの宿では、今大掃除の真っ最中。
「福の神」と、宿の主人が歓迎する裕福な商人の大黒屋一行が間もなく到着するからだ。

そんな折、宿の裏手では、流しの直吉(尾上久朗右衛門)と、女中のおゆき(久我美子)が駆け落ちの相談をしていた。

二人の気持は結びついているのだが、おゆきの父親、卯之吉が宿の主人にひとかたならぬ恩義を受けている身なので、その娘だけが勝手に逃げ出す事など許されない事情があったのだ。

一方、宿の松風の間には、ここには御禁制の海外へ船出する船員が出入りしていると噂で聞いて来たのだが、そういう人間はいないかと主人に詮索する奇妙な侍が泊まり込んでいた。

そんな中、二人の侍が、同時にぎやまんの宿に入ってくる。

一人は藤木勘三郎(尾上梅幸)、もう一人は荒垣五郎助(尾上松録)といった。

藤木は、奇妙な侍がいる松風の間の相部屋となる。

事情を聞いてみると、榊原千之助なるその奇妙な侍、好きだった国頭の娘が家老のバカ息子と結婚しようとするので、池に落として殺してしまい、勘定所から金を盗んで遁走して来たので、ここから海外へ脱出する手段を探しているのだという。

それを聞いた藤木、カンラカラカラと笑い飛ばす。
自分は、常に女から山のように恋文をもらう身なので、女など相手にしないようにしていると嘯く。

折からの祭りの日、手品使いの幻斎坊呑海の妙技を見物中、ひょんな縁で仲良くなった藤木と荒垣は、宿の美人女中、おうた(花井蘭子)がどちらに惚れているか賭をする事になる。

おうたは結局、色事師藤木といい仲になるのだが、おゆきと直吉の駆け落ちの手助けをしてやった後、おうたとの仲が深まるのを恐れた藤木は宿から姿を消してしまう。

そんなぎやまんの宿にやって来たのが、大黒屋の取引相手であった灘衛門を頭とする海賊一行。
実は、荒垣もその海賊の仲間だったのである。

荒くれ者の灘衛門は、一目でおうたを気に入り、強引に自分の女にしようとするのだが…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

おそらくは九州長崎辺りをイメージしたと思われる宿場町で繰り広げられる、ちょっと捻った人情ものというか男女の愛情物語になっている。

海賊は後半登場するものの、すべて宿での話で、タイトルから想像してしまうような海洋冒険譚ではない。

まだ、戦後のチャンバラ表現が禁止されていた時期の作品か?と思わせるほど侍たちが刀を抜かないのだが、一応、最後の最後で立ち回りは描かれている。

基本的には、陽性で遊び人の侍が女心を弄んでしまった責任を取る事になる…といった、ほのぼのとしたエピソードが話の中核であり、地味ながらも全編明るいタッチで描かれているのでそれなりに楽しく観る事ができる。

歌舞伎の尾上菊五郎劇団との提携作品とのことで一門の役者が総出演らしいが、あいにく浅学のため見知った顔がいないのが残念。

久我美子も、タイトルで名前を確認していなければ識別できないほど若い。

人情時代劇の佳品といった感じであろうか。