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風雲千両船

1952年、東宝、村上元三原作、三村伸太郎脚本、稲垣浩監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

日本の夜明け直前だった慶應3年、講武所の大砲三番隊、黛三五郎(大谷友右衛門)は、酒で顔が赤かったにも関わらず、上司の取りなしで見事に演習発射に難なく成功するくらいの元気者。

しかし、その後がいけなかった。
馴染みの芸者小はん(山根寿子)がかねがね冗談で見たいといっていた大砲の弾を持ち出して、彼女の元へ遊びに出かけたのだ。

幕府の配下たちからその場に踏み込まれ、三五郎は重罪人として捕らえられる事に。

その後、江戸を逃げ出した三五郎は長崎に大道花火師として姿を現す。

そこでは、幕府と勤王派の両方が購入したがっていた「サン・ジョアン号」という船を見る事になるのだが、その船の交渉権は、清国人王朱明(ワン・チュンミン-志村喬)が、自分の妾で、表面上は「ぎやまん亭」という旅館の女主人ということになっている鈴江(山口淑子)に握らせていた。

一方、彌次郎(小杉義男)というごろつき侍から搾取されている盲目の歌う少女百合(木匠マユリ)を見かけ、同情した三五郎は、自分自身も大道芸で商売しようとした所を当の彌次郎から因縁を吹き掛けられた末、斬り合いとなり手傷を追ってしまう。

そんな三五郎を見かけて屋敷に招いて介抱くれたのが、昼間、道で見かけ、その美貌振りに三五郎が一目惚れしていた鈴江だった。

そんな「ぎやまん亭」には、「サン・ジョアン号」を売ってくれと交渉に来る幕府側の人間だけでなく、長州からは、上海帰りの高杉晋作(長谷川一夫)、坂本龍馬(二本柳寛)、桂小五郎(大日方伝)、伊藤俊輔(加東大介)が、途中、盗賊(東野英治郎)一味に襲われながらも、揃ってやってくる。

高杉は、かつて彌次郎に託していた百合の目が見えなくなっている有り様を見て、ただちに彼女を医者に見せることになるのだが、そんな事とは知らない三五郎は、用心棒として住み込むようになった「ぎやまん亭」から、百合の目の治療代として鈴江の金を勝手に持ち出してしまうのだった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

東宝創立20周年記念映画。

幕末の長崎の町、そこにある異国情緒溢れる旅館を中心とした人情時代劇になっている。

歌を歌う盲目で薄幸の美少女が登場する所は「阿片戦争」(1942)に似ているし、「ぎやまん」と名付けられた長崎の旅館が舞台になるという所は「群盗南蛮船」(1950)に似ている。

明るく元気いっぱいの青年侍が主人公で、そこに美貌の女将や、歴史上の偉人たち、さらに幕府の役人、ごろん棒や盗賊といった分かりやすい悪役も登場して、船の交渉合戦を中心に、男女の恋の駆け引き、父娘の再会などの人情劇が織りまぜられている。

ものすごい大作や大活劇といった感じではないが、心暖まる大衆娯楽映画といった出来映え。

一応、主人公は若い三五郎なので、ヒロイン役の山口淑子はともかく、長谷川一夫の方は後半、少し活躍するといったくらいの印象。

むしろ、出番は少ないながら、本作で一番印象深い役を演じているのは東野英治郎だろう。
こんなに得な役を演じている東野さんを観るのも珍しい。

三五郎と親しくなる酒屋の女将を演じている沢村貞子、どこか得体の知れない無気味さを秘めている王を演じる志村喬の存在も貴重。

一応、実物大の船は登場するが、タイトルから期待されるような海洋アクション等はない。

タイトルロールに東宝特殊技術課の名前が出てくる所を見ると、三五郎が打ち上げる花火の表現は、かなりリアルなアニメ表現だと思う。

又、西洋風の「ぎやまん亭」が町並みの奥に見えるシーンは、一見実物大の屋外セットのようにも見えるが、ひょっとすると、巧みな合成かも知れない。

他の作品からの流用かも知れないが、冒頭のずらりと並んだ大砲の数には驚かさせる。