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暗黒街の弾痕

1961年、東宝、関沢新一脚本、岡本喜八監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

小さな町工場である小松モーター研究所の所長小松(中谷一郎)とドライバーの草鹿一郎(三島耕)は、新開発のエンジンを搭載した自動車のテスト走行を秘密裏に行っていた。

しかし、そのテスト車を追い掛ける謎のバイク。

三角峠に差し掛かったテスト車は、突然走路妨害して来たトラックを避けきれず崖下に墜落、草鹿一郎は死亡してしまう。

マッコウ鯨の銛の打ち方を部下に教えていた草鹿次郎(加山雄三)は、兄の死を知らせる電報を受取ると、直ちに小松の研究所を訪れ、兄が「S(産業スパイ)活動」の犠牲になった可能性があると聞かされる。

南沢署の東警部(三橋達也)は、事件当時の事を聞きに来た次郎の熱心な態度に、一旦は事故死として処理した一郎の事件を再調査してみる気になる。

その頃、次郎とは大学の野球部で一緒の親友で、雑誌「実話世界」の編集長という肩書きで、実は恐喝まがいの生活をしていた須藤健(佐藤允)はトラック運転手、通称房州こと中江房吉(堺左千夫)を、馴染みの飲み屋「桃ノ木」に誘い、事故の事を追求している所だったが、そこへ現れた次郎と再会の喜びを味わう暇もなく、野上組が紛れ込み喧嘩騒ぎになる。

翌日、その房州もバイク事故で死亡。

次郎は、小松の口から、エンジンの設計図に興味を示している三つの企業、ABC工業、ヴィナス石油、そして互栄経済興信所を一つづつ調べることにする。

しかし、そんな自分に尾行者(天本英世)が付いたことに気づいた次郎は、逆にその男を捕まえて、キャバレー「パラゾン」のカジノの支配人をしている志満(中丸忠雄)の所にたどり着くのだった。

一方、そのパラゾンには、須藤も様子を探りに来ており、ホステスのトミ(水野久美)の口から「パラゾン」の経営者は、互栄経済興信所の所長、大鳥(河津清三郎)である事実を知るのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

1960年前後、人気のあった「暗黒街もの」の一つ。

産業スパイという素材が目新しい以外は、作品としては凡庸な感じがする。

企業間同士の熾烈な競争の裏側を暴くといった社会派風の展開になるのではなく、結局、いつもの通り、ギャング同士の仲たがいといったスケールの小さな話にまとめてしまっている所がつまらなさの原因。

犯人のキャスティングに、ちょっと意外性はあるのだが…。

バイタリティに富み、図太く生き抜くタイプの佐藤允に比べ、主役を演じる加山のキャラクターが生真面目な好青年という以上のものになっておらず、何か今一つ魅力がないのも惜しい。

岡本作品での加山と佐藤允のコンビは、「独立愚連隊西へ」(1960)に次ぐもの。

雑誌「実話世界」の社員として登場する横山道代とミッキー・カーチスの陽性のキャラクターが場を和ませているのが、せめてもの救いか。

小松の妹、杏子を演じているのは浜美枝だが、登場場面も少なく印象も薄い。

三橋達也も、今回はほとんど見せ場がない。

殺し屋役を演じている天本英世、二瓶正典らがいかにも弱そうなのも、サスペンスを弱めている一因。

キャバレー「パラゾン」で、島崎雪子が三人の怪し気な男たちと「誰も知らない〜」と歌っているシーンは、「暗黒街の対決」(1960)で、その天本英世ら三人組の殺し屋が歌っていたシーンを連想させる。

クライマックスの工事現場でのアクションは、前半の伏線を生かしたアイデアがちょっと面白い。