1966年、東宝、井手雅人脚本、稲垣浩脚本+監督作品。
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戦国時代、一揆はその中でも特異な位置を占めていた。
これは、農民たちと一致協力して侍と戦い、合議によって自由の民として生きていた、とある土豪の伝承である。
加賀の国、信夫(しのぶ)の土地には、侍相手に暴れまわる豪右衛門(三船敏郎)という豪傑がいた。
今日も、侍を蹴散らした後、上機嫌で女房(乙羽信子)ら農民たちが待ち受ける砦に帰り着いた豪右衛門は、8年間も人質として円城寺家の城に幽閉されていた二人の弟、弥藤太(佐藤允)と隼人(田村亮)が帰って来るという知らせを受け、大喜び。
しかし、村に戻って来た二人の兄弟をさらおうと攻めて来た男たちがいた。
二人同様、人質として円城寺の城に留め置かれていた梓姫(星由里子)の父親、朝倉の城主(平田昭彦)の家臣であった。
豪右衛門ら信夫衆の応戦もあり、二人の兄弟は無事村に戻り、祝いの席が設けられる。
その場で、弥藤太は、美しく成長したあやめ(大空真弓)と再会し、たちまち心ときめかせるが、女も侍も毛嫌いしている豪右衛門はあやめを信用しない。彼女はもともと死んだ落武者の子供だったからだ。
一方、城で読み書きを覚えた隼人の方は、粗野な兄、豪右衛門をあからさまに軽蔑するようになる。
実は、彼は長年暮して来た同じ城の中で、梓姫と心を通じ合わせる仲になっていたのであった。
その頃朝倉の城では、家臣の但馬(西村晃)が、今こそ土豪たちの加賀七党を手なずけ、円城寺家を攻め入る時期だと城主に進言していた。
その朝倉家から金をもらっただけではなく、時代の趨勢を読んでいた鯱兵衛(富田仲次郎)の音頭で、七党の面々は朝倉に協力しようといういう気運になりかかるが、独り豪右衛門だけは、どうしても侍を信じきれず、協力を拒む。
その豪右衛門一門の結束を崩そうと、但馬は、隼人に梓姫からの手紙を届け味方に引き込むのであった…。
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田村三兄弟の末っ子、田村亮のデビュー作で、信じられないほどの騎馬軍団が登場する時代劇スペクタクル。
黒澤明の「影武者」(1980)や「乱」(1985)の時代には、集めるのにも苦労したといわれる馬と、その馬に乗れる人間が、この当時はまだこんなに用意できたのか…と改めて驚かさせる。
これを観てしまうと、「天と地を」(1990)などが、いかに空疎なスペクタクルだったかが分かる。
一応「隊長ブーバ」というアメリカ映画の翻案だといわれているらしい。
いってしまえば、豪右衛門の豪快なキャラクターだけで全編引っ張っているような内容なのだが、それだけでも十分面白い作品になっているのに驚かされる。
個人的に今まで観た稲垣作品の中だけではなく、時代劇全般の中でもかなり上位に属すると感じる娯楽映画の傑作。
それだけ、三船演じる一見、偏屈で粗野、今や考え方も時代遅れになりかかっている豪右衛門なるキャラクターが、パワーに溢れ、愛すべき存在であるという事だろう。
黒部進、上田吉二郎、加東大介、天本英世など、お馴染み所が随所随所に登場するのも楽しみ。
田村亮は、良くこの重要な役所を演じ切っている。
星由里子の美しさも絶品!
我がまま放題な豪右衛門の女房を健気に演じている乙羽信子の存在も印象的。
