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ゆき

1981年、にっかつ児童映画+虫プロ、佐藤隆介原作、宮崎晃脚本、辻伸一作画監督、今井正監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

天上界では、じんじ(小林昭二)とばんば(中西妙子)の二人が雪囲炉裏から地上に雪を振らせていた。

じんじは外で遊んでいた雪ん子(牛原千恵)を呼び寄せると、囲炉裏の中を覗くように命ずる。

雪ん子が目を凝らすと、下界の様子が見えて来た。

赤い点に見えるものは燃えている村だという。

今、下界では戦や野盗の襲撃等、人心が乱れきっているので、ゆきに下界に降りて、一年以内に掃除をして来いとじんじはいう。
それが出来なければ、ゆきは風になってしまうとばんばは心配する。

しかし、勇を決して囲炉裏の火に飛び込み下界に舞い降りた雪ん子は、大きな屋敷の前で一人の少女から声をかけられ気がつくことになる。

少女の名は戦乱で両親を失ったハナ(杉山佳寿子)といい、今は、隻眼隻足の親方(小松方正)の元で、物乞いをして暮しているという。

ゆきと名乗ることにした雪ん子は、その親方のところへ向う途中、村の長者、強兵衛(八奈見乗児)の牧場で、一頭の白馬フブキと出会う。

誰にもなつかないといわれていたフブキは、はじめてあったゆきにすぐになついてしまう。

吹き矢の名人フキなどの助言もあり、無事、親方の仲間に加われたゆきは、その夜、強兵衛の屋敷を野盗のつむじ風一味が襲うらしく、それを村のじいさまを中心とした農民たちが待ち受けているという情報を手にし、全員で様子を見に行く。

案の定現れたつむじ風一味は、名馬フブキを狙っていたのだが、どこからともなく駆け付けたフブキに跨がったゆきは、首領のつむじ風を対決し、見事打負かしてしまう。

さらに、農民たちと協力して、戦ばかり起こしている藤原君永と藤原定時両軍を打負かしたゆきだったが、強欲な強兵衛を村から追い払った辺りで、村に天変地異が起こりはじめたため、あろうことか、神人様という山の神の祟りを恐れた農民たちからその責任を押し付けられることになる…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

ちばてつやがキャラクターデザインを担当した、民話風の時代劇アニメ。

真面目に作られた作品だということは分かるが、いかんせん予算がなかったのか、テレビアニメを見ているような動きや美術で、正直、全体的に見ごたえ感が薄い。

さらに、いかにも大人が子供の為になる話を作ろうとして頭で考えたきれいごとという雰囲気が強く、教育アニメでも観ている雰囲気がある。

主人公のゆきも、清楚なイメージを強調するためか、感情の起伏が余り表面に出ない大人しいキャラクターであるため、今一つ感情移入しにくいし、それを補うように、ハナなど、物乞い仲間の子供達が生き生きと描かれ、その辺はちばてつやっぽいのだが、何せ、話の展開が農民対侍とか野盗といった大人の話が中心なので、こちらも今一つうまく生かされているとはいいにくい。

農民たちが正しい行いをしたのにそれが神の怒りに触れると考えるということは、そんな歪んだ信仰心を持つ心の中にこそ「本当の敵」がいるのだと説く辺り、作家の強いメッセージ性を感じる。

クライマックスに登場する神人様というのが大映の大魔神そっくりなのだが、この辺、公開当時問題にならなかったのだろうか。

それでも、特に出来の悪い作品という訳ではなく、テレビの名作アニメでも観ているような気分で観る分には、これで十分かも知れない。