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与太郎戦記

1969年、大映東京、春風亭柳昇原作、舟橋和郎脚本、弓削太郎監督作品。

23才の駆け出し咄家の秋本与太郎(フランキー堺)は徴兵検査を受けに来て、内科検診の軍医(月の家円鏡)の前でいきなりスッポンポンになってしまうほどのおっちょこちょい。

しかし、そんな愛弟子与太郎の為に、 師匠(春風亭柳橋)は出征前夜、慰労の為カフェへ連れて行ってくれたり、風呂で背中を流してやるのだった。

初年兵というだけでも先輩兵から何かといじめ抜かれる身分なのに、生来、間が抜けている与太郎は、失敗の連続。しかし、そんな与太郎を陰ながら優しく接してくれたのは古年次兵の伊藤一等兵(露口茂)だった。

さらに、芸は身を助けるというか、与太郎が咄家であることを知っている先輩連中から落語の催促が相次ぎ、結構、可愛がられるようになって行き、そのまま一等兵に昇進。

やがて、火薬工廠に分遣され、民宿の世話になるようになった与太郎は、その家の娘、千恵子(南美川洋子)に一目惚れ、同伴した先輩の近藤兵長(小山内淳)も彼女の事を気に入っているようなので、内心気が気ではなく、あげくの果てに千恵子に誘われる夢を見て寝ぼける始末。

その後、6年も二等兵をやっている強面(実は男色)のヤクザ田熊(梅津栄)に惚れられたり、脱柵した仲間を探しに新宿の遊廓にはじめて連れて行かれたり、見張り中、新婚夫婦の寝室を覗いたことがばれ、独房に入れられたりした与太郎だったが、結局、女の経験はないまま、中国戦線に送られることになる。

そんな与太郎は、慰安宿での初体験直前、夜間地雷撤去の任務を命ぜられ、その最中に敵の攻撃を受け、腕を負傷してしまう。

送られた病院で、かいがいしく面倒を見てくれた美しい看護婦の大和田さくら(水木正子)に、またまた与太郎一目惚れ。

ラブレターを書いて彼女の机に置いたまでは良かったが、そのラブレターはあろうことか、オールドミスの神崎婦長(菅井きん)が読むことになる…。

春風亭柳昇の体験に基づいて書かれたと思われる原作の映画化で、フランキーが軽妙洒脱な演技で主役を演じてみせる兵隊喜劇。

当時現役の咄家連中が多数出演しており、その顔を発見する楽しみもある。

与太郎の兄弟子、春風亭柳好は本人、川辺少尉に三遊亭金馬、週番指令には春風亭梅橋、吉田師団長には柳家金語楼、新宿のポン引きとして三遊亭歌奴、退役軍人の瀬川閣下に三遊亭円右、慰安宿を管理する衛生兵に三遊亭小円遊、中国のラーメン店主に柳亭痴楽、さらに中国の病院の軍医に、原作者、柳昇自身が演じている。

他にも、大魔神の中身、橋本力なども軍人役で登場していたりで、ストーリーを楽しむというよりは、キャスティングを楽しむ作品と言えるかも知れない。

気楽に観れるプログラムピクチャーの一本といったところで、 語られているエピソードそのものはたあいないものばかり。

見所はやはり、この頃のフランキー堺そのもの。
口も身体も良く動いていて、その達者さには舌を巻いてしまう。

その後、こういう、スクリーンに登場しただけで頬が弛んでしまうようなタイプの喜劇役者は出ていないのではないか。

後半看護婦として登場する水木正子という女優さんは、ちょっと朝加真由美に雰囲気が似た知的で清楚な感じの正統派美人なのだが、大映が倒産する直前に何本か出演しているだけで、その後消えてしまった人のようなのが惜しい。

はじめて男性からラブレターをもらったと勘違いして、踊ってはしゃぐ菅井きんというのも珍しい。