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龍の子太郎

1979年、東映動画、松谷みよ子原作、三井隆史脚本、浦山桐郎脚本+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

昔昔、まだ電気もテレビもなかった時代、作物が取れず、貧しい山の中の村に魔物の子、龍の子太郎(加藤淳也)と呼ばれる少年が婆様と二人で暮していた。

その太郎、生来の怠け者で人一倍の大飯ぐらい、婆様の農作業の手伝いをするでもなく、日がな一日、食っちゃ寝の毎日だった。

そんな太郎の友だちといえば山の動物たち。

ある日、動物たちと相撲をとっていると、大の相撲好きの天狗様が現れ、太郎に勝負を挑むのだった。

結果は、天狗様の勝ちだったが、太郎の気性に惚れた天狗様は、太郎にヒョウタンに入った魔法の酒を飲ませてくれ、その魔力によって、太郎は百人力の力を得ることができる。

しかし、その怪力は「人の為になる時」にしか効力がないという。

家に戻った太郎は、婆様から自分の出生に秘密を聞かされる。

何でも、たつという母親(吉永小百合)は、太郎を妊っている最中、訳あって龍に変身してしまったというのだ。

生まれて川上から流れてきた太郎は珠を持っており、それを舐めて成長したが、途中で珠はなくなってしまった。

何も食べない太郎に困った婆様は、赤ん坊の太郎を連れて沼の龍を訪ねてみると、龍は、一つしか残っていなかった自分の目を太郎に渡す。

太郎が舐めていたのは、龍の目だったのである。

結局、両目を失い、視力を失った龍は、沼にいることが出来なくなり、北の湖へと飛び去ってしまったというのだった。

その話を知った太郎は、矢も盾もたまらなくなって、母親探しの旅に出ることになる。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

国際児童年を記念して作られた本格的アニメ作品。

旅をする内に、周辺の村びとの貧困の様を目の当たりにした太郎が、自分がやらねばならない目的を発見する成長物語になっている。

背景は水墨画風というか、独特タッチで渋くまとめられており、それに、独自に簡略化された可愛らしいキャラクターが重なる。

いかにも民話風の伸びやかな物語が展開していき、クライマックスも見ごたえがあるし、後味も良い。

実写の映画監督がはじめてアニメを演出すると、たいてい、違和感のある結果に終わったりすることもあるが、この作品は見事に成功していると言える。

声優として吉永小百合や樹木希林が参加しているのが珍しい。

悪い黒鬼(北村和夫)と対決した太郎が、相手に巨岩を投げ付けると、黒鬼が金棒でその岩を一本足打法で打ち返し、「806号だ」といったりする時事ネタが時代を感じさせる。

「わんぱく王子の大蛇退治」(1963)の「アメノハヤコマ」を連想させる空を飛ぶ馬が登場したり、「未来少年コナン」を思い起こさせる太郎の逆立ちポーズなど、往年の東映動画感覚が楽しい。

劇場版「宇宙戦艦ヤマト」(1977)で沸騰したSFアニメブームの最中に作られた作品だけに、ややもすれば埋没しがちな作品かも知れないが、完成度は高く、アニメファンなら必見の名作であると思う。