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多羅尾伴内

1978年、東映東京、比佐芳武原作、高田宏治脚本、鈴木則文監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

満員の観客で埋まった大阪セネターズ対日報レッドソックスのナイトゲームの9回裏。

3点差で廻ってきたサード、高塚(司千四郎)は逆転サヨナラ満塁ホームランをかっ飛ばすが、一塁へ向う途中で突然倒れてしまう。

その首筋には、鳥かぶとから抽出されるアコニチンという猛毒が塗られた太い針が刺さっていた。

グランドの現場に向ったカメラマンの徳光(南利明)は、風采の上がらぬ見知らぬ中年男から、一塁側の観客を全部撮るようにしつこく迫られたので、仕方なくその指示に従うことにする。

その風采の上がらぬ男は多羅尾伴内(小林旭)という弁護士で、海外へ出張中の名探偵、藤村大造の留守を守りながら、警視庁の宇田川警部(財津一郎)の元にも良く出入りしていた。

徳光が撮った写真から、高校の時、高塚とバッテリーを組んでいたものの、その後、目を負傷し、カメラマンになっていた川瀬(成瀬正)という男が不信人物として浮上して来るが、その川瀬は、鶴の折り紙の首輪をかけた状態の遺体となって発見される。

そんな中、多羅尾伴内 は、藤村を訪ねてきた信愛医科大学理事長の木俣信之(池部良)、秘書、新村真砂子(夏樹陽子)、望月八郎(天津敏)らから、10億円を脅迫されている事実を聞かされるのだった。

脅迫状には、チロヌプ・カムイ(狐の神)という謎めいた署名がしてあった。

やがて、アイドル歌手の穂高ルミ(三崎奈美)が、出演中の歌謡ショーの最中に惨殺される事件が発生する。

現場に現れた無気味な仮面をかぶった『きつね男』とは何者なのか…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

御大、片岡千恵蔵がかつて演じた人気キャラクターを、新たに小林旭が演ずる作品。

もともとが荒唐無稽なサスペンスものなのだが、本作では小池一雄や石森章太郎が協力しているためもあってか、かつて「多羅尾伴内」の影響で生まれたテレビヒーロー「七色仮面」を連想させるような、東映ヒーローもの調というか、より子供向けのマンガチックな内容になっている。

「お遊び感覚の娯楽映画」と割切って作っているのか、一面、歌謡映画のような雰囲気もあり、小林旭自らがロビンフッドのような奇抜な格好をした流しの男に化けて「昔の名前で出ています」を歌ったり、八代亜紀、アン・ルイス、キャッツ・アイなど実際の歌手たちも出演するサービス振り。

さらに、警官の制服マニアの映画評論家、水野晴郎まで警察官の上司役として登場している。

全体としては、安っぽい2時間サスペンスを観ているような印象で、ケレン味たっぷりの殺人シーン以外のドラマ部分になると、急にテンポがゆるくなって冗漫になるのが特長。

登場人物の一人として、元フォーリ−ブスの江木俊夫が出ているのは、彼が子役時代、「大草原の渡り鳥」(1960)で小林旭と共演している関係ではないだろうか。

「大草原〜」でも、本作同様、アイヌのことが描かれているからだ。

同じ荒唐無稽な娯楽作品なのだが、「大草原〜」のスケールの大きな面白さを知っていると、本作のチープさはあまりにも哀しい。

御大のオリジナル版は、もともと、大人向きに作られたサスペンスものだったのだが、大映から東映にシリーズが移行すると、そのあまりの荒唐無稽振りが結果的に子供達から喝采を受けるようになったというもの。

東映が作ると、サスペンスも子供向けになってしまうということなのかも知れないが、本作の場合、正直、子供向けに作っているのか、大人向けなのか、ターゲットがはっきりしない感じである。

そもそも70年代の設定である本作の後半で、「ノートルダムのカジモド」のようなキャラが登場するというのもどうかと思う。ギャグのつもりなのだろうか?

大人から子供まで、幅広い層を狙って作ったのかも知れないが、往々にして、そういう作品は、どの層が観てもピンと来ないものになりがちで、本作もその例外ではなかった。