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女の学校

1955年、宝塚映画、大林清原作、中川順夫脚本、佐伯幸三監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

芸大を卒業後、神戸にある女学校、桜丘高校の校長をやっている叔母(細川ちか子)の招きにより、音楽担当の新任教師として赴任して来た羽鳥明子(寿美花代)は、神戸駅の階段で慌てた男性とぶつかってカバンの中身が散乱してしまう。

学校に到着した明子は、英語担当の吉岡先生(藤原鎌足)などを校長から紹介されているところへ、遅れて帰って来た先ほどの男性が、実は自分を迎えに出かけていた理科担当の佐山先生(鶴田浩二)であった事を知らされるのだった。

明子は女子寮の舎監も任せられる事になり、寮生でジャズを歌うのがうまい裕福な家の娘、志賀富子(雪村いづみ)と、佐山先生の事を秘かに慕っている生島弥生子(環三千世)のお転婆コンビや、母(水谷八重子)独りに育てられ、ピアノで芸大受験を目指している真面目な大友宗子(浦路洋子)などの生徒と知り合う事になる。

同じクラスでも、宗子にライバル視されるほどのピアノの才能に恵まれていた相沢雪子(扇千景)は、実家から通っているため、どうしても寮生たちとあまり付き合いがない事もあり「点取り虫」とあだ名されていたのだが、実は彼女も両親がすでに亡く、目の不自由な姉、双葉(淀かほる)と二人で、ピアノ嫌いの叔母の家で肩身の狭い思いをしながら暮していたのであった。

やがて、いつもは明るかった弥生子の様子がおかしくなる。

彼女は、好きな佐山先生が明子と親しくなっている事に、少女らしい嫉妬と不安を感じはじめていたのであった。

さらに、彼女の姉で、心斎橋で「洋品店テンコ」を営んでいる典子(鳳八千代)が、桜丘高校の後援者でもあるパトロンの清水(小川虎之助)から迫られ、階段から落ちて大怪我を負って入院した事を知り、ヤケを起こして、姉の友人のキャバレーのマダム(南悠子)の店で働かせてもらう事になる。

その噂を、富子から知らされた明子は、吉岡先生と佐山先生の応援も頼み、問題のキャバレーへ乗り込んでいくのだが、その時、ヨッパライから絡まれた佐山先生の様子を、たまたま店に居合わせ、佐山先生がかつて有名なラグビーの選手だった事を知っていた新聞記者が興味本位に撮った写真が翌日の新聞紙面に大きく載ってしまった事から、学校内部にとんでもない誤解を招く事になっていく…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

往年の宝塚のスターがキラ星のごとく出演している「少女趣味の学園もの」と言ったところか。

寮の舎監も兼ねた新任女性教師が女学校で活躍すると設定は、戦前の高峰三枝子主演「信子」(1940)などに先例があるが、主演の寿美花代が今とあまりイメージが変わらない事にまず驚かさせる。

最初は彼女や、最初からお転婆キャラで目だっている雪村いづみがメインの物語かと思っていたが、実は彼女たちはどちらといえば傍観者の立場であって、物語の中心は、環三千世や扇千景、浦路洋子ら複雑な家庭環境に多感な心を傷めている女学生たちの、ちょっぴりおセンチなエピソードで構成されている。

圧巻は、扇千景扮する雪子の芸大受験でのエピソード。

この当時、少女漫画でもお馴染みだった、いかにもわざとらしい「お涙もの」展開なのだが、今観ても、つい泣かされてしまう。

あまりにも当時の扇千景が、薄幸の美少女にぴったりな可憐な雰囲気を持っているからだ。
この扇千景の美貌振りを観るだけでも、本作は観る価値があると思えるほど。

今はさすがにあまり見かけなくなった「お涙演出」だけに、逆に新鮮に見える。

爽やか青年教師を演ずる鶴田浩二というのも珍しいが、クリスマスの日、教員室で「きよしこの夜」を独唱する藤原鎌足の姿も珍しい。

全体としては、割と良くある学園ものパターンなのだが、扇千景のエピソードが後半を印象深いものにしている。

隠れた秀作の一本だろう。