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喜劇 花嫁戦争

1971年、松竹+ホリプロダクション、山崎巌脚本、斉藤耕一脚本+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

とある港町。

網元の息子で幼馴染みだった秋本欽一(萩本欽一)と晴れて神前結婚を挙げている最中の花嫁、長谷秋子(和田アキ子)は、突然「いやだ、いやだ」と呟いて、式場から逃げ出そうとする。

秋本もそれを止めるどころか、窓から縄梯子を垂らして彼女の脱出を手伝ってやる始末。

網元と結婚すれば融資が受けられると考えた秋子の父(佐山俊二)の政略結婚に、二人ともどうしても納得できなかったからだ。

単身上京した秋子は、銀座の美容室で全身美容、かつら、寿司を三人前出前など、贅沢の限りをつくした後で、バッグの中の財布がなくなっている事に気付く。

事情を知った美容室の女社長(角梨枝子)は、鎌倉にある実家のお手伝いになって、正夫(梅地徳彦)という子供の教育係になってみないかと秋子を誘うのだった。

かくして、鎌倉の里見家にやってきた秋子は、わがまま放題で手の付けられない子供に育っていた正夫からいじめられていた植木職人(左とん平)や通いのお手伝いトキさん、能面作りを家でやっている正夫の父親里見明(原田大二郎)などと出会う事になる。

次第に分かって来たところによると、里見家の長男、信太郎(古今亭志ん朝)と次男、明は、里見家の主人(十朱久雄)と先妻との子供。

信太郎は出世目的で、勤める会社の重役の傲慢で軽薄な娘、君子(水森亜土)と付き合っている。

正夫は、明が咲子(九里千春)という水商売の女に生ませた子供で、咲子から押し付けられる格好で、男手一つで育てているのだと言う。

美容室の女社長は後妻で、彼女との間に生まれたユミ(中川加奈)という長女は、今やフーテン仲間たち(ジャイアント吉田ら)と自堕落な遊びに耽る毎日。

主人は主人で、髪結いの亭主を地でゆく無責任な暮らし振りで、いつもヨーロッパ旅行へ出かけて不在がち。
さらに後妻の女社長も、それをいい事に、実家にはほとんど寄り付かないで美容室で寝泊まりしている…と言った風に、完全にバラバラな家族状態にあった。

秋子は、そんな歪んだ家族関係の中で精神的に孤立していた正夫を叱りつける内に、徐々に正夫に慕われるようになっていくのだが…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

ホリプロ製作で和田アキ子主演と来れば、誰が考えても、プロモーション目的で作られた一種のアイドル映画であろう。

ストーリーの骨格も、良く言えば「和製メリーポピンズ」みたいなものである。(むしろ「家政婦は見た!」に近いか?)

この頃の松竹作品で「喜劇〜」と銘打ってある作品は、たいてい「お涙、ペーソス人情劇」と思っていれば良い。

この作品も例外ではなく、萩本欽一、三木のり平などお笑い系の人が出演している割には、笑うような箇所はほとんどなく、最後にほろりとさせる人情話になっている。

ギャグと言っても、財布を探すアッコのバッグの中にヒゲそりが入っていると言ったレベル。

むしろ興味深いのは、この作品が作られた当時が、まさに「変身ヒーロー、怪獣ブーム」のまっただ中にあった事だろう。

秋子が気に入り出した正夫は、小学校の友達たちに「彼女は少年院出身で、背中に怪獣の刺青があり、仮面ライダーみたいに強いんだ」などと妙な自慢をする。(実際は、秋子は青葉女子大出の22才という設定)

さらに、正夫の夢の中のシーンとして、火山島で巨大怪獣レッドキングに襲われる特撮まででてくる。

それだけではない。

本作で、和田アッコは、レッドキングそのものになるシーンまであるのだ!

数あるアイドル映画の中でも、アイドル自身が怪獣になると言うのも珍しい。
ハマリ役と言えば正にハマリ役なのかも知れないが…。

三木のり平扮する及川という謎の老人の家のお手伝いさんとして、シンシアこと南沙織がちらり登場し「潮風のメロディ」を歌っているところにも注目。

さらに、劇中、女社長の助手として登場する武原英子が、後半、「明さんと結婚しろ」と周囲から勧められるのもちょっとおかしい。

彼女は後年、ホリプロの別のあきらさん(にしきのあきら)と結婚する事になるので。