1960年、東宝、大薮春彦原作、寺山修司脚色、須川栄三監督作品。
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銀行強盗をした後、ある場所に隠しておいた大金を取り戻しに来た5人の男たち。
田辺(丹波哲郎)、衣川耕三(平田昭彦)、大村(仲谷昇)、高橋(宮口精二)、舟橋(田武謙三)。
だが、その場所に金はなかった。
一緒に隠しておいた拳銃ワルサーも…。
彼らは仲間の一人が裏切ったに違いないと、互いを疑いはじめる。
後日、衣川耕三は刑務所帰りの弟、恭介(水原弘)と久々に再会し、妻(島崎雪子)の待つ自分の家に連れて帰る。
しかし、耕三は、その夜、田辺からの電話に呼出されて出かけた後、自動車に轢かれて帰らぬ人となる。
今後の就職の世話等、全面的に頼りにしていた兄が亡くなり、独力ではまともな就職口も見つけられない状況であるを知った恭介であったが、かといってこのまま義姉との同居生活に甘んずる気にもなれず、家を飛び出すが、その際義姉から渡された兄の財布の中から見つけた鍵で、コインロッカーに隠してあったワルサーを見つけだす。
真面目なセールスマンとして成功していたと信じていた兄に、何か裏があるのでは…と気付き出した恭介だが、 昔なじみの元ボクサー坪田(仲代達矢)を訪ねて聞いてみても、答えをはぐらかされるばかりであった。
やがて、同じく昔なじみの踊子由里子(北あけみ)と再会。
そのヒモらしきチンピラ(ジェリー藤尾)が、恭介の持っていたワルサーに気付き、急に卑屈な態度になるのを見た恭介は、拳銃の持つ威力に強く惹かれはじめる。
同時に恭介は、兄はかつての仲間に殺されたのではないかと疑いはじめ、一人で復讐をする決意をするのだった…。
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「野獣死すべし」(1959)に次ぐ、大薮春彦原作のハードボイルド作品。
本作でも、仲代達矢が地味ながら重要な役所で登場する。
主役を演ずる水原弘は、本来歌手なのだが、まだあどけなさが残る不良少年の役を見事に演じきっている。
単なる復讐劇に留まらず、「犯罪は割にあわない」という教訓話にもなっており、犯罪者たちが心理的に自滅していく過程も描かれているのが面白い。
生活苦から犯罪に加担したものの、小心さは消えない小市民を演ずる仲谷昇や宮口精二ら男性陣の演技も興味深いが、妖艶な大人の魅力を見せる島崎雪子と無邪気な小娘を演ずる北あけみの対比も印象的。
丹波哲郎だけは、この頃から丹波哲郎そのものというしかない役柄であるのもおかしい。
また、登場場面は少ないながら、岸田今日子や天本英世も顔を見せているので注目。
「野獣死すべき」ほどのインパクトはないが、随所に須川監督一流の映像感覚が見て取れ、それなりに楽しめる作品になっている。
