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イキングッド

2000年、アイスランド、ギリス・スナイル・エトリンソン監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

昔昔、 アイスランドでは、流氷が嵐と餓えと白熊を運んで来るといわれていた。

特に老人たちは、よその世界からやってくる悪魔たちを恐れていた。

牧師の息子ポアス(ヒャルティ・ラグナー・ヨンソン)は、異教徒的な考えに凝り固まった変人の村人ソルケルの影響を受けてか、モンスターや呪術等に興味を示す少年だった。

ある日、ポアスは、氷の斜面を滑り落ちた橇を追って海岸近くまで来た時、不思議なものを遠目に目撃する。

白熊に似た不思議なものが海岸を歩いていたのである。

さっそく教会に帰ったポアスは、怪物が現れたと村中に告げるのだった。

その言葉に半信半疑の父親に反し、ソルケルとその仲間は、海岸に様子を見に行き、途中で途切れた不思議な足跡を発見する。

ポアスは、さらに一人で探検に出かけ、崖の中腹にある空洞に何ものかが潜んでいるのを発見するのだった。

ある夜、寝室のポアスは窓の外に現れた白熊のような怪物を発見する。

家族中も、その姿に気付き、やがて、村中の人間が家からでてきて、その怪物をおいかけだしたところで、大きな雪崩が発生、村はあっという間に壊滅状態になってしまう。

結果的に、村人たちは、その怪物に命を救われたことになるのだ。

一方、雪崩に襲われ独り生き埋め状態になったポアスは、あろうことか、その怪物に助け出される。

それは怪物ではなかった。

白熊のような防寒着を着た見知らぬ異国の少年だったのだ。

言葉は互いに通じないものの、イキングッドというらしいその少年(ハンス・ティットス・ナキング)と友だちになったポアスは、彼を家に連れて帰るが、家族の皆をはじめ、村の大人たちは、そのイキングッドを外界からやってきた悪魔だと思い、何とか捕まえようとするのだった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

非常に珍しいアイスランド製の映画。

古い迷信に凝り固まった小さな村に、イヌイットらしき異国の少年がたどり着いたことから巻き起こる小さな騒動を描いている。

少年ポアスと家族たちは、イキングッドと暮す内に、子供特有の無垢な心と異国の知恵に触れ、次第に偏見を捨てるようになっていくが、遠巻きに観ているだけの村人たち、特に迷信深いソルケルにそそのかされた仲間や保安官たちのよそ者に対する偏見蔑視は頑強で、その辺がちょっとしたサスペンス要素になっている。

特に奇を衒ったような演出はなく、正攻法でしっかりしたドラマを構築している。
雪と氷に閉ざされたアイスランドの寒村の風景も美しいし、登場する人物たちも皆素朴な印象で好感が持てる。

サイドストーリーとして描かれる、ちょっぴりドジなオルガン弾きの息子イッグルイ(フィンヌ・グルムンソン)と、ポアスの姉アウサ(フレディス・クリストフェズドッテル)の純朴な恋物語も微笑ましい。

シンプルな寓話風のストーリーだが、本来、子供に人種偏見はないというテーマは普遍的で貴重。

世界中の大人から子供まで観て欲しい、心が洗われるような名作だと思う。