TOP

映画評index

ジャンル映画評

シリーズ作品

懐かしテレビ評

円谷英二関連作品

更新

サイドバー

ファイヤードラゴン/火雲伝奇

1994年、香港、ン・マンワイ+タン・ビックイン脚本、ユエン・ウーピン監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

朝廷への謀反を計画する六王(りくおう)の事を伝える兄チェン・ルーからの伝書鳩を受けたユン・ミンは、ただちに兄の元へ駆け付けたが、兄チェンはすでに、六王が差し向けた刺客、火雲邪神に襲われている最中だった。

火雲邪神は火を自在に操る女で、恐ろしい使い手だった。

辛くも、六王謀反を記した兄からの密書を託されたユン・ミンは、空を飛んで火雲邪神から逃げる内に、銭湯で金儲けをしているとある集落に落ちて難を逃れる。

その集落を仕切っていたのは、六王に使える役人、チャンの妹である事を鼻にかけた身勝手な自己チュ−女タン・リンユー 。

彼女は、風呂の中に落ちて来たユンの男振りに惚れ込み、何とか彼を自分のものにしようと、彼の所持品の中から身分証明書になる護符を抜き取ってしまう。

護符を抜き取られた事に気付いたユンは、それを取り戻すために、その集落に留まる事を余儀なくされる。

やがて、そのユンを襲って来た火雲邪神だったが、勝負の最中、役人のチャンが集落に戻って来たのを見つけ、とっさに怪我をしたルクという女に成り済ますと、チャンに介抱される形で集落に潜り込む事になるのだった。

彼女の正体を怪しむユンだったが、ルクに成り済ました火雲邪神はなかなか正体を現さず、虎視眈々と、ユンの密書を狙っていたのだったが、ある夜、集落に新たな刺客が襲い来る。

その刺客こそ、六王の寵愛を一身に受けたいばかりに、姉である火雲邪神をも無視して襲って来た、妹のスーであった。

集落の人々の人情に触れる内に、人間らしさを取り戻しかけていた火雲邪神は、常々自分に嫉妬してきた妹スーと戦う事になる…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

「マトリックス」や「キル・ビル」でのアクション演出を助けたユエン・ウーピンが監督した武侠アクション。

ワイヤーを駆使したアクロバチックでスピーディなアクションと、様々な炎を演出したパイロ・テクニックを組み合わせ、迫力のある画面作りに成功している。

ストーリーそのものは、日本でいう「通俗娯楽時代劇」という感じで、いわば、一昔前の東映時代劇みたいなものである。

剣の達人だが、表面上は軽いノリの陽性な主人公。

その主人公を付け狙う美しいくノ一もどきの女武芸者。

主人公にしつこく迫るコメディエンヌ風の女。

町人風の気の良い仲間たち。

まさに、将軍への謀反を企む悪家老の陰謀を防がんとする旗本退屈男とか若様侍の活躍を描く、往年の東映時代劇そのままの構造である。

この手の通俗時代劇は、日本では60年代半ば、黒澤明の時代劇の出現によって途絶えてしまい、後は、テレビ時代劇等に細々と受け継がれていただけだったのだが、香港ではまだ90年代でも、こういう古臭いパターンを守り抜いていた事に驚かされる。

さすがにまだCGなどはほとんど使われておらず、ほとんどがアナログ表現だと思われるが、テクニック的には相当高度な事をやっており、アクションシーンは迫力満点、これだけやれば、ハリウッドが注目するはずである。

最初の内はユン・ミンが主役だと思わせるが、途中から、人間の心を取り戻し、葛藤しはじめる火雲邪神の方が主役のようになっていく。

六王の祭りのシーンでは、和太鼓の演奏、富士山風の屏風絵、後半では、野立て用の大きな傘など、随所に日本風の小道具が登場するところも注目。

クライマックスの、無数の大きな酒瓶をうまく使った独創的で大迫力の大立ち回りは必見である。