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ブラック・コメディ ああ!馬鹿

1969年、東宝、リチャード・スティガ−原作、須川栄三脚色+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

とある会社の総務課に勤める赤垣(小沢昭一)は、何年経っても出世しないダメ社員。

同じ課の新宮テル子(高橋紀子)に気があるのだが、なかなか良い返事をもらえない。

ある日、結城常務(小林桂樹)のお供で随行したホテルで、そのテル子と出くわしてしまう。
テル子は結城常務の愛人だったのであった。

結城は、赤垣に口止めをすると共に、テル子のためにアパートを借り、退社した彼女はそこで生活を始めるようにするのだった。

ところが、彼女との連絡が取れなくなったとして、会社に怒鳴り込んで来た荒くれ者がいた。
ダンプ運転手をしているというテル子の兄(加藤武)であった。

テル子と親しかった人間として応対した赤垣だったが、うまい返事が出来ず、やむなく常務の元へ。

ところが、結城は、常務室にまで乗り込んで来た兄に、テル子はこの赤垣と結婚し、アパートで暮しているととっさに嘘を付いてしまう。

かくして、赤垣は、兄が来る際は、テル子の夫として行動しろと結城から命ぜられるのであった。

しかし、当のテル子は、同じアパートの住人で大学生のケンちゃん(高橋長英)と意気投合、結城の知らない間に勝手に遊び回っていたのであった。

そうしたテル子の浮気を知った結城は逆上し、ある夜アパート内でテル子をきつく叱責するのだが、その事が元で、彼女はかねてより口癖のようにいっていた睡眠薬自殺を本当に実行してしまう。

慌てふためいた結城は赤垣を呼出し、うまい事後処理をするよう、又しても身勝手な命令をするのだが…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

何となく良くあるパターンのように感じるドタバタコメディ。

映画は、その後、完全に息をしなくなったテル子をどうにか始末しようと焦りまくる赤垣の様子を面白おかしく描いていく。

死体の処理をめぐってあれこれドタバタが巻き起こるというパターンは、ヒッチコックの「ハリーの災難」(1955)をはじめ、落語の「らくだ」など、似たような作品をすぐに思い浮かべる事ができる。

タイトルに「ブラック・コメディ」と付いているので、テル子が自殺云々を言い出す辺りから、大体その後の展開も見えてきて、ミステリファンだと最後のオチまで予測ができてしまうところがある。

その辺がちょっと弱いという感じはするが、貧乏くじばかり引いているダメ男を熱演する小沢昭一が楽しい。

高橋紀子はクリクリとした大きな目が印象的なアイドル顔の女優さんで、本作でも独特のキュートさを見せてくれる。

小林桂樹も、生真面目そうに見える重役姿と、肥満した中年体型をさらけだして裸で慌てるスケベ男を楽しそうに演じ分けているし、その妻を演ずる中北千枝子や、同じ重役を演じる西村晃は、いつものような存在感振りを発揮し、安心して観ていられる。

遊び人風の学生を演じている高橋長英が、その後のイメージからすると、ちょっと意外な感じもするが、当時の若さを考えれば、これもぴったりな役柄というべきだろう。

しかし逆に、そうしたキャスティングの適材適所振りがあまりにハマり過ぎていて、映画としてのインパクトというか、意外性を弱めているような感じもしないではない。

全体的に取り立てて面白いという感じではないが、気軽に楽しめる娯楽作品にはなっている。