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赤毛

1969年、三船プロダクション、広澤栄脚本、岡本喜八脚本+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

慶応3年春、空からお宮のお札が振ってきて、全国に世直しを願う「ええじゃないか」が巻き起こる。

翌4年、官軍の先陣をきって江戸へ向っていた赤報隊の一員で、すっかり官軍のお題目「年貢を半分にする」に心酔していた農民出身の下っ端、権三(三船敏郎)は、郷里の沢渡(さわんど)が近づいてきたので、思いきって隊長の相良総三(田村高廣)に、3日間だけ自分を先に村に行かせて村人たちを説得させてくれと頼む。

ついては、隊長がかぶっている赤毛の冠りものを拝借できないかと図々しいことも願い出るのだが、権三の人柄が気に入られたのか、結局、両方の願いとも聞き届けられることになる。

久々に郷里の村に戻ってきた権三は、代官、神尾金太夫(伊藤雄之助)の強引な年貢の取り立ての人質として、男たちは皆、毛無山へ連れて行かれ、残された女たちは、皆、借金をするために金貸の木曽屋(富田仲次郎)と番頭(岸田森)に頭を下げにいっているという、悲惨な光景を目の当たりにすることになる。

取りあえず、恋人同士ながら借金の為にその仲を引き裂かれそうになっていたスリの三次(寺田農)とお袖(岡田可愛)を助けてやった権三は、木曽屋を脅かし、女郎に売られた村の女たちの証文を全部手に入れると、春(乙羽信子)をはじめとする女たちを全て解放してやり、かつての恋人、トミ(岩下志麻)や母親(望月優子)とも再会を果たすのだった。

さらに、昔なじみの医者の玄斉(天本英世)の元に集まり、代官所襲撃を目論んでいた若者たちに会いに行く。

彼らは皆、権三が昔、ガキ大将だった時のはな垂れ小憎の成長した姿だった。

官軍がすっかり世直しをすると信じ込んでいる権三は、隠し持っていたお宮のお札を若者たちに降らせ、村人たちの心を掴むと、代官所に彼らと押し掛けて年貢米などを全て持ち帰ってきてしまうのだった。

訳もわからぬまま、権三の勢いに飲まれ、間もなくやってくる官軍が世の中をひっくり返してくれると信じはじめた村人たちは浮かれ騒ぎ、逆に今まで村を牛耳っていた代官や金貸、岡っ引きの駒虎(花沢徳衛)などは、すっかり色を失うことになる。

しかし、周りにおだてられ有頂天になった権三の命を秘かに狙うものが村にはいた…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

昭和44年度芸術祭参加作品。

「七人の侍」の菊千代を連想させるような、農民出身で侍になりたがっている、頭が弱くお調子者のキャラクターを、久々に三船が演じる全編ハイテンションの娯楽作。

正直、昔のはな垂れ小憎たち(吉田昌史や木村豊幸、阿知波信介ら)のガキ大将という設定にしては、どう見ても三船演ずる権三は年を取り過ぎているのだが、この当時、すでに、型にはまった役柄が多くなっていた三船本人は、やりたくて仕方なかったキャラクターだったのではないだろうか。

かなり無理をしているようにも見えるが、とにかく一生懸命、お調子者を演じている。

脇を固める役者たちも多彩で、瓦版売りの雨ガエルに砂塚秀夫、木曽屋の用心棒、一ノ瀬半蔵に高橋悦史、馬屋の甚兵衛に浜村純、その娘、お葉に吉村実子、代官の手下として常田富士男、他にも睦五郎、地井武男、神山繁、草野大悟、左卜全、堺左千夫…など、当時の東宝系役者が賑々しく登場する。

狭い宿場村は、突然やってきたおかしな男権三を信じるもの、迷惑がるもの、無関心なものと、大きく三つのグループに分かれていく。

最後に笑うのは誰なのか…。

後半はひねりも用意してあり、展開も面白い。

俳優陣の中では、「ああ爆弾」風のとぼけたキャラクターを演ずる伊藤雄之助や、ニヒルな用心棒の高橋悦史、さらに、正体不明の番頭を演ずる岸田森などがいい。

乗りに乗っていた時代の岡本喜八監督の才気と、独立プロで、今までにない面白い娯楽作を作ろうと夢見ていた頃の三船ががっぷり四つに組み、互いの才能を出し切った快作だと思う。

あまり知られていない作品かも知れないが、映画ファンなら必見。