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ああ爆弾

1965年、コ−ネル・ウールリッチ「万年筆」原作、岡本喜八脚本+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

同じ日に出所したヤクザの親分、大名大作(伊藤雄之助)と爆弾犯の田ノ上太郎(砂塚秀夫)は、同じ刑務所の同室で暮していた。

大名が期待した子分たちの迎えはなく、独り待っていた息子の健作(高橋正)がいうには、組は3年の間に株式会社になってしまい、本妻(越路吹雪)は宗教に凝ってしまったという。

かつての事務所に戻ってみれば、そこは「株式会社大平和」となっており、何と、市会議院候補の矢車弥三郎(中谷一郎)が、そこの社長におさまっているではないか。

子分、竜(二瓶正也)の説明によれば、大名には会長の地位が用意してあるという。

しかし、自宅に戻ってみれば、そこも矢車の表札に変わってしまっており、中に入ると、大名の2号だったミナコ(重山規子)の血まみれの姿と、包丁を持った子分テツ(天本英世)がいるだけ。

テツによれば、大名の2号だったミナコの兄、矢車に組ごと全て乗っ取られたらしい。
七代目を継がすはずだった建作は、今では、子供ながら新聞配達のバイトで母親を助けているのだという。

さすがに頭に来て、組に殴り込もうとした大名だったが、持病の高血圧が悪化し失神。
気付いてみると、太鼓を叩く女房が住むあばら家に寝かされていた。

すっかり、元の縄張りが「大平和」の支配下になってしまい、自分の影響力がなくなったことに気付いた大名だったが、偶然にも、バキュームカーの運転手になっていた田ノ上と再会。

大名は田ノ上の爆弾作りの力を借りて、矢車暗殺の計画を実行することになるのだが…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

ユーモアサスペンス風のストーリーを、全編、リズムに合わせた独特の演技による実験的手法で撮った異色作。

ある時は狂言風に、ある時はミュージカル風に…という具合。

大名の幼馴染みで、今は矢車の運転手となっている椎野竹三、通称「しいたけ」に沢村いき雄、ミュージカルシーンで歌って踊る銀行の支店長に有島一郎、その秘書に桜井浩子など、懐かしい顔ぶれが揃っている。

歌って踊る有島一郎や桜井浩子の姿を観れるのも珍しいだろう。

内容は町内どたばた騒ぎ…といった印象の展開なのだが、全編、実験映画のような独特のタッチなので、それに対する評価も観る人によって全く違ってくるではないか。

個人的には、まずまず…といった所か。

何といっても、お人好しな親分を演ずる伊藤雄之助の珍妙なキャラクターが面白い。

爆弾の実験をやるために、大名と田ノ上、爆発音の多い映画館の裏側を選ぶという設定なのだが、そこで上映されている作品は、爆発シーンが多い戦争もので藤田進のアップがあるところから、岡本監督自身の作品「どぶ鼠作戦」(1962)ではないかと推測される。

ただし、爆発の音をごまかす瞬間に選ばれたのはニュースフィルムのロケット発射シーンで、一瞬写るそのフィルムは、どうも円谷英二の手になる特撮シーンを流用しているように思える。

銀行を舞台にした沢村いき雄のどたばた劇もなかなか愉快。

沢村いき雄がリズムに合わせてセリフをいっているシーンなども貴重だろう。

部分、部分に面白いシーンはいくつもあるのだが、全体として観て、ものすごく面白いかといわれると、返事に窮するような感じもある。

映画ファン、岡本監督ファンなら、異色作として一見の価値はあるだろう。