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少林寺拳法 ムサシ香港に現わる

1976年、松竹大船、風間健+三村晴彦原作、猪又憲吾+長尾啓司脚本、南部英夫脚本+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

香港空港でいきなり外国人男性から因縁を付けられるムサシ(風間健)、そのまま路上で勝負を挑まれ、あっさり相手の胸板を砕いてしまう。

その直後、ムサシは、幼い頃生き別れたきり、いまだに探し求めている妹そっくりの女性に遭遇するが、人違いだとわかる。

その後、強い相手を求めて香港中の道場を渡り歩くムサシに近づいてきた男がいた。

武道好きの大富豪逍延年の秘書らしく、主人が強いあなたと会いたいのだという。

元武道家だったという話に惹かれ、とりあえず、逍の家に出向いたムサシだったが、老いた相手が、もはや勝負をするような人間ではないと気付いたムサシは帰りかける。

その時、屋敷内に、複数の賊たちが侵入し、ボディガードたちと乱闘が始まる。

その様子を傍観していたムサシは、一人だけ腕の立ちそうな男の姿を認める。

聞けば、その男、逍の命を付け狙っている呉宗憲という男だという。

自分が戦うべき相手だと確信したムサシは、逍の言葉に甘える形で、屋敷に滞在することになる。

後日、ムサシは秘書に連れて行かれたナイトクラブで歌を歌っている日本人女性を紹介される。

先日、妹と間違えた柴田玲子(五十嵐淳子)であった。

懐かしさから、彼女と逢瀬を重ねることになるムサシだったが、実は彼女は呉の恋人だったのだ。

そうとは知らず、うっかり洩らした情報が元で、外出先で逍を呉に襲撃され、自らも腕をけがしたムサシは、玲子と再会。警察官だった逍の父親を無惨にも殺害した逍の悪らつな正体を聞かされるいことになる…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

ブルース・リー「燃えよドラゴン」(1973)によって引き起こされたクンフーブームの中で作られた作品。

主演の風間健とは、武道家であると同時に、俳優筒井道隆の父親でもある。

作品の印象はといえば、昔のテレビドラマ「Gメン’75」の「香港編」でも観ているような感じ。

「燃えよドラゴン」そっくりの主題曲に歌まで付いているのが、ますますB級感を高める。

知らない香港俳優ばかり登場しており、見覚えのある出演者といえば、中村雅俊の奥さん、五十嵐淳子だけ。

肝心の風間健も「ヒーロー顔」というより「泣き顔」で、画面上あまり強そうに見えないのが致命的。(息子とは、似ても似つかない情けない風貌)

劇中で、少林寺拳法というのが、中国から伝わったカンフーと日本古来の拳法から生まれた日本独自の技であることが説明されている。このトリビアを知るだけでも、本作の価値はあるかも。

奇妙なのは、この作品、どうも全編「吹き替え」らしいことである。

例えば、逍の声を森山周一郎が当てているように、香港の俳優たちが吹き替えなのはわかるとしても、どうも、五十嵐淳子や風間健自身の声も吹き替え臭いのだ。

五十嵐は歌手という設定なので、当然、歌うシーンがあるのだが、もともとアイドル歌手だった彼女の歌唱力はとても誉められたレベルではなかったように思うのだが、この作品の中では、実に巧みに歌っているし、その歌う声と会話部分の声が同じなのだ。

また、風間健の方も、劇中で中国語と日本語を使い分けているようなのだが、声はどちらも同じ渋い低音で、妙にセリフ回しが巧い。とても、映画初主演の素人の口調ではない。

香港で絵だけ撮って、音は後から全て日本で勝手に付けたのだろう。
作業的にも、その方が効率が良かったと思われるからだ。

クンフーブームが生んだ珍品映画の一種と理解する方が良いかも知れない。