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スワロウテイル

1996年、「スワロウテイル」製作委員会、岩井俊二原作+脚本+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

むかしむかし、「円」が世界で一番強かった時代。

日本は円都と呼ばれ、その円を目指して、日本にやってくる外国人たちのことは「円盗」と呼ばれ蔑まれていた。

売春婦をやって亡くなった円盗の母親を持つ名無しの少女(伊藤歩)は、仲間の円盗たちをたらい回しにされたあげく、同じく売春婦のグリコ(Chara)の世話になることになる。

胸にアゲハ蝶の刺青をしているグリコは、兄二人と日本にやってきたらしいが、兄の一人は交通事故で死亡、もう一人の兄とは別れたまま、いまだに会えずじまいなのだという。

その日から「アゲハ」と呼ばれるようになった少女は、結局売春婦にはならず、真面目にグリコと野外食堂で働くようになる。

そんなグリコとアゲハは、ある日、買春目的の客、葛飾組の幹部ヤクザ須藤寛治(塩見三省)とトラブルを起こしてしまう。

須藤から乱暴を受けかけた二人を助けるため駆け付けた友人で元ボクサーのアーロウ(シーク・モハメッド・ベイ)が、ヤクザを二回の窓から外へ殴り落としてしまい、運の悪いことに、そのヤクザは、落ちた直後、トラックに轢かれて死んでしまったのである。

円盗仲間のフェイホン(三上博史)らと、須藤の死体を始末しに出かけたグリコたちは、死体の身体の中から「マイウェイ」が吹き込まれた謎のカッセトを見つけることになる。

そのテープには、円盗たちのドンともいうべきリョウ・リャンキ(江口洋介)も必死に探し求めていた重要な秘密が隠されていたのだが、そんなこととは知らず、自分達で秘密に気付いたフェイホンたちは、たちまち大金持ちになり、その金を元にかねてからの夢であったライブハウスを作ることにする。

ひょんなことから、その店で歌いはじめたグリコはたちまち音楽事務所からも目を付けられるようになり、またたくまに人気歌手へと変貌していく。

しかし、一方、彼女の身分を隠すため、意図的に密告されたフェイホンの方は円盗として警察に捕まってしまうのだった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

現実ともファンタジーともつかぬ独特の設定の中で繰り広げられる異邦人とその子供達の青春物語。

「むかしむかし…」と、一見寓話のように始まるが、この作品の中に描かれているような日本在住の外国人やその子供達は現実に大勢いると思われる。

ファンタジックにかなり誇張されているとはいえ、ここに登場するような在日の人たちの葛藤は、形こそ違え、毎日のように現実でも起こっているに違いない。

それを、しょせんは他人事と考えれば、この物語も、あくまでも架空の世界のファンタジーである。

しかし、自らのアイデンティティに悩みながらも、前向きに毎日を生きようとする彼らを自己の姿に投影できれば、これは実にリアルな青春ストーリーなのである。

その辺の感じ方の違いで、本作の評価は違ってくるのではないか。

中国人を演じている三上博史、Chara、渡部篤郎、江口洋介らが実に生き生きと演じているし、それらの人々と出会う内に、少しづつ一人の人間として自立して行くようになる少女役の伊藤歩もなかなか良い。

色々なゲスト人が登場しているが、雑誌記者役の桃井かおりや、阿片窟に居を構えている怪し気な医者兼刺青師役のミッキー・カーチスなどは存在感があり面白い。

決して、ハッピーエンドではないかも知れないが、観終わった後の後味は決して悪くない。