TOP

映画評index

ジャンル映画評

シリーズ作品

懐かしテレビ評

円谷英二関連作品

更新

サイドバー

そろばんずく

1986年、フジテレビ+AtoZ+ニッポン放送、森田芳光脚本+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

広告代理店「ト」社社員、春日野八千男(石橋貴明)と時津風わたる(木梨憲武)は、ライバル会社「ラ」社の天敵雄(渡辺徹)と、何かにつけて競い合っていた。

そんな二人は、銀座のクラブで、元カレとの思い出にと、一人でカラオケを歌いに来ていた梅づくしのり子(安田成美)と知り合う。

後日、そののり子が、「ト」社の新入社員だったことが判明。三人はたちまち意気投合する。

PK食品の大山(石立鉄男)を接待し、CFモデル竹千代(奥野敦子)との契約を決めたと思っていた春日野たちは、突然のドタキャンを知る。どうやら、ライバル「ラ」社に鞍替えされたらしい。

春日野と時津風は、大山と天敵が現れたクラブで、怪し気な霊媒に扮し、竹千代のイメージを壊す芝居をするのだった。

ライバル社の仕事をふいにすることに成功した春日野、時津風、のり子三人は、気分転換の為、ドライブに出かけるのだが、そこで、「ラ」社の社員たちの秘密特訓の現場と、それを指揮する謎の人物を目撃する。

その謎の人物こそ、アメリカ帰りのエリートで、「ラ」社の娘婿でもある桜宮天神(小林薫)であった。

実は、のり子が手酷く捨てられた元カレとは彼のことだったのだ。

辣腕の天神は、すでに「ト」社の手によって進行していた「おっぱいミルク」のクライアントと秘かに手を組むと、出来上がったフイルムに理不尽な言い掛かりをつけ、仕事を「ラ」社に奪ってしまうのだった。

あまりに露骨な妨害に抗議にいった春日野と時津風は、その行動を秘かにビデオに撮られ、天神に暴力を奮っているように編集されたビデオを「ト」社社長(小林桂樹)に送られてしまう。

結果、退社を余儀なくされ、蕎麦屋に就職した時津風と掃除屋に就職した春日野は、秘かに逆転の機会を得るために、天神の側に近づき、あれこれ秘密情報を得ようとしはじめるのだが、逆に、その計画を知った天神に、春日野が罠にはめられてしまう…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

当時、人気が出始めていた「とんねるず」と、こちらも俊英森田芳光監督が組んだ新機軸の作家映画。

「ト」社の社長が小林桂樹で、「ラ」社の社長が三木のり平となれば、「社長シリーズ」など、東宝の往年のサラリーマン喜劇を意識した作品であるということも分かる。

しかし、本作を「コメディ」と勘違いして観ると、結果は、「訳が分からないひとりよがりの映像」となっている。

おそらく、森田監督には「お笑い」という感覚が全く分かっていなかったか、最初から「コメディ」などを作るつもりはなかったかだ。

「社長シリーズ」や「クレージー映画」などでは、ハイテンションの役者と普通の芝居をする役者の落差、ごく普通の会社風景に異形の要素が混入してくる設定の落差などで笑わせていたのだが、本作にはその「落差」がどこにも存在しない。

一般人にとっては、広告代理店という業種自体も仕事としてリアリティが希薄なだけでなく、出てくる役者全てが「ハイテンションで奇矯な演技」をしているからだ。

そこには、設定も、キャラクターも、観客に自然に見えるものは何一つ登場しない。
最初から最後まで、ナンセンスというか不条理の連続。

これでは観客は、緩急のリズムを見い出すことが出来ないので、どこでも息が抜けず、笑うに笑えない。

キャスティングを見ると、特に「出てくるだけで笑いが取れる」ほどの役者が出ていないこともあり、おそらく監督は自分の才覚だけで面白くできると確信していたのだろう。

「とんねるず」のイメージにとらわれず、あくまでも、森田監督の「実験映画」くらいの感覚で観ることをお薦めしたい。