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落陽

1992年、にっかつ撮影所、藤浦敦+根本哲史+伊藤信太郎+谷口公浩+ドゥエイン・ダミーゴ脚本、伴野朗原作+脚本+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

昭和3年、中国のクラブで、関東軍賀谷達馬(加藤雅也)は、西洋人に見える歌姫張蓮紅(ダイアン・レイン)にしつこく接待を迫っている中年男が、かつて父親をを自殺に追い込んだ政治家だと知り、思わず、軍刀を振り上げるが、それを阻止しようとした秘密結社の首領、杜月笙(ユン・ピョウ)を傷つけただけに終わる。

列強諸国の餌食にされかけていた当時の中国に、遅ればせながら参加してきた日本は、満蒙の地に関心を持っていた。

3年後、関東軍を辞めた賀谷は、旅順の関東軍司令部の石原中佐(嵐圭史)に呼ばれ、戦争には金が必要なので、君が何としてでも掻き集めてくれと依頼される。

旧友、土門(にしきのあきら)と再開した賀谷は、富豪劉宗仁(中村梅之助)の息子で銀行を経営している立教(尾藤イサオ)を拉致し、抗日資金として用意していた1億元の現金を強奪することに成功するが、折しも、昭和6年9月18日は満州事変がぼっ発した時でもあった。

その日をきっかけに、関東軍はあっという間に満州の大半を占領してしまう。

再び、石原に呼出された賀谷は、五族協和王道楽土の満州国を作るために、さらなる金を作れと命ぜられる。

石原の理想に共鳴する賀谷は、高騰する塩を売ることで莫大な富を得るが、その金を奪おうとする裏切者から襲われた時、かつてクラブで出会っていた蓮紅と再開する。

彼女は馬族となっていたのであった。

しかし、その後、任を解かれた石原に代わり、後継者となった竹井中佐は、石原や賀谷が最も忌み嫌っていた阿片を使って金儲けをすることを強要するようになる…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

にっかつ80周年記念として50億(実質はその半分以下という説も)の巨費を投じて作られた大作。

まず、本作を観ていて気付くのは、大作といっている割には、客を呼べそうなスターが誰も出ていない点である。

一番有名なのは、ダイアン・レインやドナルド・サザーランド、ユン・ピョウといった海外の俳優だろうが、彼らは皆、主役ではないし、そもそも日本の一般大衆への知名度という点では怪しいものがある。

さらに日本人俳優はと見れば、これ又、どちらかといえば渋い脇役タイプの人ばかり。

全体的に、全く役者の華がないのである。

ストーリーにしても、戦時中の中国を舞台にしたピカレスク・ロマンとでもいえば聞こえは良いが、要するに、他国を侵略しようとする軍人の理想論に乗った男が、汚い悪事を重ねて金儲けに走るという話である。
歌手から馬族になるというとんでもない設定のダイアン・レインはそんな小悪党の愛人でしかない。

海外ロケを強調するような名所案内風の中国風景と、スペクタクルというにはスケールの小さいエピソードがいくつも並べられているが、サスペンスもロマンもなければ、後半に期待を持たせるような盛り上がり方もない。

せっかくユン・ピョウが出ているのに、クンフーシーンも迫力ないし…。

あえて本作の見所を挙げるとすれば、マイク・ミズノ&ボンちゃんの出演場面くらいだろうか。

その後「シベ超」シリーズとしてカルト人気を誇るようになる映画評論家水野晴郎氏扮する山下泰文大将閣下と西田和晃氏の部下役が誕生したのはこの作品だからだ。

お二人とも演技に関してはずぶの素人といってよい。

一応、有名人である水野氏だけでなく、無名のボンちゃんにまでセリフが用意されているのが驚かされる。
しかも、2シーンも。
実は、水野氏よりも、このボンちゃんの方の下手くそさに注目すべきで、二人のコントシーンはマニア(どういう?)必見。

途中、唐突に登場するくノ一集団のような女性暗殺団による安手のアクションシーンも見物…か?

原作者が脚本と監督も兼ねている事からみて、大衆を意識した娯楽映画というよりも、完全なる作家映画というか、自己満足作品と解釈すべきかも知れない。


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