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はいからさんが通る

1987年、東映東京、大和和紀原作、西岡琢也脚本、佐藤雅道監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

大正7年初春、かつて徳川幕府に仕えた旗本の家系花村家のじゃじゃ馬娘、花村紅緒(南野陽子)は、父親(河原崎長一郎)の言い付けで、「行儀見習い」のため、公家の血筋を引く伊集院の屋敷を訪れる。

しかし、そこで待ち受けていた陸軍少佐伊集院忍(阿部寛)は、何と、伊集院家の祖母(風見章子)が定めた許嫁だという。

何でも、幕末の時代、自分が愛しあった花村家の相手とは、勤王派と佐幕派という立場の違いの為、結婚することが出来なかったため、平和な時代になったら、良家の血筋を交えようという約束を交わしたのだとか。

自分の意思とは裏腹に、伊集院家で花嫁修行と称し、世話係り、如月(野際陽子)の指導の元、徹底的にしごかれはじめた紅緒は、薩摩の出身で、女性に対し差別的な言動が目だつ祖父(丹波哲郎)にも猛烈な反発心を抱えながらも、忍の優しさにも助けられ、必死に耐え抜くのであった。

そんな紅緒も、日頃のストレスの鬱憤と、街で偶然目にした忍と芸者(松原千明)の仲睦まじい姿に逆上し、酒場で酔ったあげく、兵隊たちと大立ち回りを演じてしまう。

忍は、その場を収めに現れたのだが、偶然、居合わせた「冗談倶楽部」という雑誌編集長、青江冬星(田中健)に面白おかしく書き立てられた結果、小倉へ飛ばされ、あげくの果てにシベリアにまで飛ばされてしまう。

独り、伊集院家で、そんな忍の帰りを待っていた紅緒の前に、鬼島軍曹(本田博太郎)という一人の兵士が訪れて来て、前線に出向いた忍が戦死したらしいと伝える。

葬式を済ませた紅緒は、まだ籍も入れていない伊集院家に頼み込んで居着き、「冗談倶楽部」の女性記者として就職し、新しい生活を始める。

まだ、忍は生きていて、必ず戻ってくるというはかない願いを秘めながら…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

人気コミックの映画化、人気アイドルの主演映画という先入観で観てしまうと、意外にしっかりした作りであるのに驚かさせるはず。

まだまだ様々な差別が残っていた時代、一人の破天荒な少女が、時代の荒波にもまれながらも一人前の大人の女性に成長して行く姿が、低予算ながら丁寧に描かれている。

新妻修行中辺りまでの前半こそ、おっちょこちょいの紅緒のキャラクターをコミカルに描いているが、忍との愛情を確認し、家に残った老人たちを守ろうと心に決めた辺りから、大人としての彼女に素直に共感できるよう、普通のドラマ風の演出になって行く。

全体的には、かつて、NHK朝の連続ドラマとして未曾有の人気を得た「おはなはん」(1966)を連想させるものがある。

「おはなはん」は、娘時代はお転婆だったものの、軍人の妻となり、子供を授かった後、夫を病気で亡くしてからは、自立して職業婦人になろうと努力する実在の女性の一生を描いた万人向けのもので、本作は、それに大陸を舞台にした大河ロマン風の要素や三角関係風の恋愛劇要素などを加わえて、より少女向けに仕上げている違いがあるくらいである。

基本的に、こうした「激動の時代を生き抜いた女性の苦労話」というのは、広く大衆に受けやすい素材と見え、ドラマやコミックなどで時たま見かけるパターンではあるが、少女向けという所が新しい。

この作品が発表された当時(1975)は、大正ロマンという設定自体、コミックとしては新鮮だったのだろう。

さすがに、映画としては、大作みたいな見ごたえ感があるとはいい難いが、それでも良く、その条件下で処理しているとも思える。

忍役の阿部寛は、ファッション雑誌「メンズ・ノンノ」のモデルを経て、これが映画デビューのはずである。

紅緒の実家のばあや役で千石規子、彼女の子分になる「暴れキントトの牛五郎」として柳沢慎吾が出演している。