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ゲゲゲの鬼太郎('68)

1968年、東映動画、水木しげる原作、辻真先脚本、設楽博演出作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

ニューギニアの奥地で巨大な生物が発見されたというので、鬼太郎(野沢雅子)の元に政府の役人が、その生物を探す探検隊に加わってくれと依頼しに来る。 隊長になる上島博士(杉浦宏策)からのたっての願いだった。

一方、謎の生物が、鯨の祖先とされるゼオクロノドンらしいと知った科学省大臣は、その血を確保できれば「不老不死」の秘密を手にすることができると考えていたが、同じ探検隊に参加する自称万能の天才、山田秀一(小宮山清)からは鬼太郎の参加に対する不満を聞かされることになる。
山田は、世の中科学が全てであり、妖怪だの一切の怪し気な存在を忌み嫌うあまり、妖怪封じの薬まで秘かに作っているような独りよがりな青年だった。

やがて、探検隊はニューギニアに到着し、鬼太郎と山田が水を探しにいっている間に、大海獣が出現。
何とかその血を採取した上島博士だったが、大海獣の倒した木の下敷きになり、瀕死の重傷を追ってしまう。

上島博士から、血の入った容器を託された鬼太郎は、手柄の一人占めを狙う山田から、妖怪封じの「サラマンドラの粉」をかけられたうえに、原住民の投げた槍を受けてしまいこちらも瀕死の状態となる。

血の入った容器を鬼太郎から奪い取り、独り海岸にたどり着いた山田は、たまたま近くを通りかかった日本の船に助けられるが、かろうじて別ルートからその場にたどり着いた鬼太郎も同船することになる。

鬼太郎をこのまま日本へ帰せば、自分の悪事がばれてしまうと考えた山田は、あろうことか、ゼオクロノドンの血を薬だと称して、鬼太郎の身体に注射してしまう。

苦しんだ鬼太郎は、見る見る内に巨大な大海獣に変身して海の直中に…。

やがて、独り日本に帰りつき、名誉を一人占めした山田だったが、目玉のオヤジ(田の中勇)恋しさに日本に到着した大海獣(実は鬼太郎)を倒すため、メカ大海獣を建造することになる…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

最初の白黒版テレビアニメの5話と6話で放映された「大海獣 前後編」を劇場用に再編集したもの。

怪獣ブームまっただ中に作られた作品だけに、妖怪ものというよりは、完全に「怪獣映画」のノリの内容になっている。

一旦は江ノ島近辺に上陸しかけた大海獣だったが、防衛隊のジェット機の攻撃を受け、人間に迷惑がかかると一端は海に戻り、やがて出現した銀座では、地下街を踏み抜くという表現まですでにこの時点で描いている。

大海獣に対し、同じ格好をしたメカロボットで対抗するという発想は、前年度の東宝作品「キングコングの逆襲」と同じ。

東映動画は同時期アニメ版の「キングコング」も作っていたので、そこから来たのだろうか?

姿形は変わっても、オヤジ恋しさで帰宅しようとする鬼太郎の帰巣本能と、探検の途中で死んだと山田から聞かされてもなおあきらめきれず、鬼太郎が帰ってくるまで「茶碗風呂断ち」をする目玉のオヤジ、互いの親子の情が泣かせる。

お馴染みの妖怪たちは登場しないし、鬼太郎宅に居候しているねずみ男もほとんど活躍しないという不満点はあるものの、このエピソード、マッドサイエンティスト山田や、怪獣もの特有の展開に独特の魅力があり、1996年にも劇場用アニメとしてリメイクされたことからも明らかなように人気の高い作品である。

最初のアニメ版から観ていた世代にとっては、ねずみ男の声は、この作品の大塚周夫以外には考えられないのではないだろうか。

鬼太郎にお守りを渡す山田の妹けい子や、山田の母親などが、今観ると、いかにもお座なりに描かれているのも興味深い。

水木しげる特有のペンタッチを一番生かしていたのは、この最初のシリーズだけだったように思える。