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地球最後の日

1951年、アメリカ、エドウィン・バルマー+フィリップ・ワイリー原作、シドニー・ローム脚色、ルドルフ・マテ監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

南アフリカの辺鄙な所にあるケンナ山観測所のブロンソン博士から呼び出しを受けたパイロットのデイブ・ランドール(リチャード・デア)は、極秘の黒い箱をニューヨークへ運ぶ仕事を依頼される。

彼の到着を待ち受けていたのは、ヘンドロン博士(ラリー・キーティング)と、その娘ジョイス(バーバラ・ラッシュ)であった。

ジョイスと付き合っているらしき医者のトニー(ピーター・ハンソン)やフライ博士(ステファン・チェイス)らと共に、黒い箱に納められていた研究資料の解析結果を聞かされたランドールは、惑星ベラスと、その周囲を廻っているザイラという衛星が、後1年足らずで相次いで地球に接近、その内、ベラスと地球は衝突する事実を知ることになる。

国連で、地球がもう時期壊滅することと、ロケットを建設してザイラへ移住する計画の緊急討議を提案したヘンドロン博士であったが、にわかに世界中の代表者を説得することが出来ず、逆に売名目的のデマではないのかという誹りを受けることになる。

それでも、彼の説を信じて金を提供するスポンサーも現れる。

車椅子に乗ったスタントン(ジョン・ホイト)もその一人だったが、彼は金を出す代わりに、ロケットに乗る人間の人選を自分にさせろとヘンドロン博士に迫るような強引なところがあった。

やがて、見切り発車的に脱出用宇宙船の建造が開始される。

宇宙船に乗り込める人間は44人。
それを知りながら600人以上の男女がロケット建造に協力することになる。

やがて、世界中が事実を認め、どこかへ避難しようとするが、時すでに遅し。

7月24日の午後1時、衛星ザイラがまず地球に異常接近し、世界各地は未曾有の天変地異に襲われるのだった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

「宇宙戦争」(1953)などでお馴染みのジョージ・パル製作の特撮SF映画の古典。

惑星ベラス…、どこかで聞き覚えが…。
そう、「GFW」にも引用されていた東宝特撮映画の古典「妖星ゴラス」(1964)に似ているのだ。
元ネタ臭い。

冒頭に登場する聖書の「世界の終末」「ノアの箱舟」伝説の発想がベースになっていると思われ、そうした宗教観を持たない日本人の目からすると、ラストは若干楽観的過ぎるようにも感じるが、あちらの国民にはこれで良いのだろう。

垂直発進の今風ロケットとは異なり、山の斜面に建設された長いレールの上を横に滑走して発射するというロケットの発想が珍しい。

44人の乗務員を決定するため、建設現場のメンバー全員でくじ引きをして運命が決まる悲劇性などは、後年の「ディープ・インパクト」などにも継承されている。

ジョイスをめぐって三角関係になるランドールとトニーとか、互いにひいたクジで引き裂かれる恋人同士など、ラブロマンスの要素がしっかり描かれている所がいかにもアメリカ映画らしい。

今観ると、ロケットなどはミニチュアバレバレだし、どう観ても絵にしか見えない合成シーンなどもあるが、ニューヨークを襲う洪水のシーンなどは、なかなか見ごたえがある。
水没した摩天楼の様など、この作品特有の終末イメージは、後の東宝特撮にも影響を与えている。

滅び行く地球の悲惨さを描くこと(実にあっさり地球は破滅する)よりも、新天地に希望を繋ぐ若者たちに視点が置かれているところが、御都合主義には思えても、今観てもすがすがしさを感じる一因だろう。