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阿修羅城の瞳

鬼が跋扈しており、その討伐部隊が存在する江戸時代というから、完全に架空世界。

ファンの観客と役者が一体化して場の雰囲気を作り上げる舞台劇ならともかく、客観的に映像を観るしかない映画というメディアでは、正直、苦しい素材だったというしかない。

善くも悪くも手堅くまとめる滝田監督にしても、さすがにこれは手に余ったか?

世界観はともかく、登場人物全般もキャラクターが芝居っぽすぎるというか嘘臭く、(ファンタジーとしても)何の共感も感じられなかった。

これだけの虚構を、舞台版を知っているとは限らない一般大衆に納得させるには、リアリティの補填など、相当、工夫を凝らさなければ難しいのではないかと思われるのだが、正直、成功しているとはいい難い。

何となく夢物語として、大雑把なストーリーの概要は分かるが…といったレベル。

一応、四世鶴屋南北が「東海道四谷怪談」を書いた実在の人物を連想させる要素なのだと思うが、ここまで嘘の世界だと、そういう設定もあまり生きているとはいえない。

致命的なのは、キャスティングに魅力がない事。

役者本人が悪いというより、微妙に役に合ってないような気がするのだ。

宮沢りえ、樋口可南子、渡部篤郎、内藤剛志…、確かに、名前のイメージからすると合っているようにも思えるのだが、実際に画面で観ると、みんなちょっとくすんで見えてしまうのだ。

染五郎さんも、舞台版からのハマり役らしいが、ネットで調べた所、どうやらこの話、「東海道四谷怪談」へのオマージュ的な内容らしいが、だとすると、染五郎さんの演じる病葉出門という人物は伊右衛門に当る役柄ではないのか?
映画で観る限り、屈託のない優男過ぎて、とても、暗い業を背負った男には見えないのだが…。

江戸の町を再現したVFXは、「梟の城」(1999)の頃に比べると多少マシになったかな…というレベルだろうか。

やはり、どんなにVFXで外見を作っても、江戸のスケール感や庶民の活気は今一つ伝わって来ないという事。

だから、ドラマ全体も、スケールの小さな舞台劇みたいにしか見えないのだ。

クライマックスの趣向も、今頃「ラビリンス 魔王の迷宮」(1986)とは…。

どちらかといえば、女性好みの作り方なのかも。