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連合艦隊

1981年、東宝映画、須崎勝弥脚本、松林宗恵監督作品。

昭和15年9月海軍省で、日独伊三国同盟に参加するかどうかの会議が行われる所から、大和が沈没するまでを描く戦争大作。

1977年の「宇宙戦艦ヤマト」の大ヒットから始まった「戦争映画」ブームの中で発想された企画ものと思われる。

前半部分は、真珠湾攻撃から、山本五十六(小林桂樹)戦死までの経緯を、過去の円谷英二の手になる特撮シーン等を交え、比較的大雑把というか、ダイジェスト風に描いていく。
この辺に関しては「連合艦隊司令長官 山本五十六」(1968)など、過去に同じような作品例があるからであろう。

後半は、戦況悪化を受け、レイテを襲撃せんとする栗田(安部徹)第一艦隊の囮になることを命じられる、小沢(丹波哲郎)第三艦隊司令長官の運命と、伊藤中将(鶴田浩二)率いる戦艦大和の最後が描かれて行く。

司令部中心の描写だけではなく、そこへ、森繁を父親役とする本郷一家、長男、英一(永島敏行)、次男、真二(金田賢一)、英一の婚約者陽子(古手川祐子)、さらに予備役で海軍に復帰した財津一郎扮する大工の小田切と息子、正人(中井貴一)父子の話が絡ませてある。

東宝御得意の特撮戦争映画の系譜に属する作品だが、肝心の特撮部分にあまり潤沢な予算が使えなかったらしく、特に、空母や大和の巨大感などが巧く表現されていないため、「特撮映画」としての見ごたえ感が薄いのが惜しまれる。

それでも、本編セットなどはそれなりに作り込まれており、予算配分の仕方が、撮影所全盛期とはかなり違っているのが察せられる。

ベテラン俳優が多数出てくる本作の中で、一番、美味しい役をもらったのは財津一郎ではないだろうか。

後半、存在感を発揮する。

もう一人あげるとすれば、宇垣参謀長を演じる高橋幸治であろうか。
キリッとした知的な男の魅力を醸し出している。

後は、大体、どこかで観たような役柄を、いつも通りこなしている印象の人たちが多い。
基本的に、オールスター顔見せ芝居だからだろう。

藤田進、平田昭彦、三橋達也、佐藤慶、小沢栄太郎、中谷一郎、神山繁、田崎潤、金子信雄、藤岡琢也…、みんな将校の役では、演技のしようもなかっただろうが、今となると、その懐かしい顔ぶれが見れるだけでも貴重な作品と言えるかも知れない。

それでも、鶴田浩二の悲愴感溢れる表情と、大和の悲惨な沈没状況は、それなりに迫力があり、なかなか。

これは、松林監督が新東宝時代、すでに「戦艦大和」(1953)という秀作で演出経験があったからではないかと推察される。
ちなみに、ウルトラセブンのキリヤマ隊長こと中山昭二などは、両方の作品に顔を見せている。

その「戦艦大和」と比較しても、本作は全体的に凡庸な出来だが、この最後の部分があるので、まだ多少救われていると言えるかも知れない。