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大いなる旅路

1960年、東映東京、進藤兼人脚本、関川秀雄監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

大正末年、盛岡駅から東京の教習所へ旅立つ同郷の幼馴染み佐久間(加藤嘉)を見送る見習い鉄道員、岩見浩造(三國連太郎)の気持は複雑だった。

自分も同じ試験を受けていたが、落ちていたからだった。

エリートコースから外れたことに荒れて、馴染みの酒屋で喧嘩騒ぎを起こした岩見は、上司(東野英治郎)から、地元でコツコツ頑張るよう諭される。

運転士の橋本(河野秋武)と組んで窯焚きに勢を出していた岩見は、ある日、途中の駅長(花沢徳衛)から、急病の祖父を見舞いに行くという若い女性を貨車に載せてやるよう頼まれる。

そのことがきっかけとなり、岩見は、その女性、ゆき子(風見章子)と所帯を持つことになるのだが、岩見本人は、それからも酒に明け暮れる毎日で、単調な毎日の仕事にも今一つ満足感を持てないでいた。

そんな岩見と橋本の乗る機関車が、ある日、雪崩に巻き込まれ脱線転覆するという事故に遭遇し、先輩の橋本は死亡、岩見自身も負傷して入院することになり、ここへきてようやく彼は、仕事への責任感に目覚めるのだった。

やがて、岩見夫妻は3男1女を生み育て、長男忠夫(南廣)、次男静夫(高倉健)、長女咲子(小宮光江)、三男孝夫(中村賀津雄)らは、各々立派な若者に成長して行ったが、折から始まった太平洋戦争は、彼ら兄弟たちのその後の運命にも暗い影を落としはじめる。

今では運転士になっていた岩見は、息子の忠夫に召集令状が来たことを上司から告げられる…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

戦前、戦後を生き抜いてきた一人の鉄道員家族の物語。

三國連太郎が、若者時代から老齢になった姿までを演じている。

国鉄が全面協力しているだけあって、登場する列車や駅の描写等は全部本物、不自然さは全くない。
転覆シーンも特撮ではなく、実際に転覆させていると思われる。

全国の国鉄関係者の大量動員を当て込んだ企画ではなかったかと思えるが、4人の子供達がたどる運命が巧みに描かれているため、後半思わず、目頭が熱くなるような感動作に仕上がっている。

旧友の佐久間の家族も、平行して描かれて行くが、その成長した長男を演じているのは梅宮辰夫である。

高倉健も中村賀津雄も梅宮辰夫も、当然ながら全員若々しいが、興味深いのは、後半、成長した高倉健が、特急「こだま」の運転をしていること。

後年、「新幹線大爆破」(1975)で健さんが演じることになる役所を考えると、感慨深いものがある。

中村賀津夫も、なかなか印象的な演技を見せる。

山本麟一が、後半、意外な役所で登場するのにも注目したい。

隠れた名作ではないだろうか。