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五人の突撃隊

1961年、大映東京、舟橋和郎+星川清司脚本、井上梅次監督作品。

昭和19年5月、ビルマ最前線でのお話。

野上中佐(大坂志郎)指揮下の前線部隊は、すでに、武器弾薬、食料などの補充もないまま、雨期を迎えようとしており、すでに戦う術も気力も失われつつあった。

そうした前線の苦境をたびたび聞かされ、師団本部の大田黒将軍(石黒達也)に、前線部隊の撤退を進言した中継部隊の曽根少将(山村聡)であったが、逆にその弱腰を批判され、前線部隊へ直接出向いて指揮をするよう命ぜられてしまう。

曽根は、野上中佐の息子である野上少尉(本郷功次郎)に同行を命ずるが、野上少尉は幼い頃より、兄、俊夫(田宮二郎)ばかりを可愛がってきた父親を毛嫌いしており、部隊に到着しても、久々に再会した父親、野上中佐とは満足な会話もかわさない有り様。

その野上部隊には、粗暴な行いの結果ムショ暮らしをするはめになり、そのために家族からも疎んじられるようになった橋本上等兵(川口浩)や、3年越しの恋を実らせ、ようやく目指す相手(浜田ゆう子)と結婚式を挙げ、初夜を迎えようとしていた矢先に召集されてしまった庄司一等兵(川崎敬三)、画家を志しており、恋人(弓恵子)もあったため、自ら敵の戦車に左手を潰され、帰国しようとしたとして、見習い士官から一等兵に格下げされた杉江一等兵(藤巻潤)、落語家の弟子でありながら、その生来の不器用さからいつまで立ってもうだつが上がらなかった小林一等兵(大辻伺郎)ら4人の戦車兵がいたが、曽根は、まず、橋本、杉江に、以前、攻撃して動かなくなっていたイギリス軍の戦車を何とか動かせるように修理させると、掘った地面にその戦車を埋め、砲頭部分だけを使ったトーチカの代用品に仕立て上げさせる。

さらに曽根は、全軍に攻撃命令を出すと見せ掛けて、実は、前線部隊全体の撤退命令を下すのだった。

トーチカ代わりの戦車に残って撤退作戦を援護するため、野上少尉と、4人の戦車兵たちが、最後まで戦い続けることになるのだが…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

エピソードの途中に、登場人物たち一人一人の半生を挿入して行くことで、彼らの人間としての存在感と心理をあぶり出しながら、その人物たちが後半、一人づつあっけなく命を失って行く展開で、戦争の悲惨さと空しさを訴える秀作。

良くあるパターンといってしまえばそれまでだが、反戦メッセージを保ちながらも、娯楽映画としても巧くまとめられている。

動く戦車が3台ほど登場し、冒頭から使い回しの手法で、各々戦闘場面を有効に盛り上げている。

戦争映画に登場する田宮二郎というのも珍しいが、残念ながら、彼は戦前の回想シーンに登場するだけで、戦場シーンにはかかわりがない。

全滅したとされている部隊の唯一の生き残りであり、もはや生者として扱われなくなった「生きた英霊」の寂しい最期を演じる安部徹も印象的。

勇猛果敢な若き職業軍人を演ずる本郷功次郎と、臆病な庶民代表の一等兵を演じる川崎敬三と大辻伺郎のキャラクターの対比も面白く、穏健派の隊長を演じる大坂志郎共々、適材適所のキャスティングが絶妙。

軍隊はおろか、世の中全てに醒めきっているように見える橋本の孤独さ、虚無感が、物語全体を貫いているようにも見える。

あまり有名な作品ではないが、一見の価値はある。