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獄門島('49)

1949年、東横映画、横溝正史原作、比佐芳武脚本、松田定次監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

「解決編」との前後編二部作からなるが、「総集篇」は、それを一本にまとめたもの。

終戦直後、日本に向う復員船の中で、病気の為、瀕死の状態であった、鬼頭千万太(沼田曜一)から、故郷の妹たちを助けてくれと遺言された金田一耕助(片岡千恵蔵)は、その約束を果たすべく獄門島に向う。

その船内で出会ったのは、獄門島の住職了然(斉藤達雄)と、島に妖雲がかかっていると犬神様のお告げをする祈祷師のおかね(原泉子)。

島に到着した金田一が最初に目にしたのは、顔に醜い痣があり、しかも隻腕の竹蔵(上代勇吉)。

さらに、了然に案内され、千万太の実家、本鬼頭に向う途中、その分家に当る分鬼頭の儀兵衛(進藤英太郎)、その同居人お志保(月宮乙女)などに金田一は出会う。

本鬼頭の当主、嘉右衛門(片岡千恵蔵-二役)は病床にあり、それに付き添っていたのは、医者の村瀬幸庵(沢村国太郎)と村長の荒木(高松錦之助)、そして娘の早苗(三宅邦子)であった。

彼らに、千万太死亡の知らせを終えた金田一を驚かせたのは、月代(千石規子)、雪枝(朝雲照代)、花子(谷間小百合)三姉妹と、屋敷内の座敷牢に入れられている与左松(島田照男)らの異様な姿であった。

やがて、了然の寺に逗留させてもらうことになった金田一を前に、三姉妹が次々と無惨な死を遂げる、無気味な殺人事件が起こりはじめる。

身分を隠して、島の駐在、清水巡査(小杉勇)に捜査協力していたつもりの金田一は、逆にその行動を怪しまれ、投獄されてしまう。

そんな獄門島に独りやってきたうら若き美女。
彼女こそ、金田一の助手、白木静子(喜多川千鶴)であった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

お馴染み、横溝正史原作「獄門島」の最初の映画化であり、東映の第一回配給作品でもある。

片岡千恵蔵の金田一ものとしては、1947年度の「本陣殺人事件」の映画化「三本指の男」に次ぐ第二弾。

冒頭に登場する沼田曜一にとっては、本作がデビュー作ではないかと思われる。

戦後しばらくの間、GHQによって時代劇が禁止されていたため、それに変わるものとして、こうした現代活劇が作られるようになったらしい。

ミステリーなので、内容の詳細には触れられないが、基本的には原作に比較的近い展開で作られているといって良いだろう。

ただし、原作通りではない。

そういう意味では、1977年の市川崑監督、石坂浩二主演版と同じように、独自のアレンジがなされていると言える。

白黒画面と言うこともあり、時代色や、一種無気味な犯罪映画の雰囲気は良く出ている。

御大片岡千恵蔵版金田一は、ソフト帽に黒シャツに白っぽいネクタイと粋なファッション。

人なつっこいキャラクターというよりも、こ難しいセリフを理屈っぽくしゃべる切れ者といったイメージ。
拳銃さばきも巧い…とくれば、金田一というよりも、むしろ、戦後の明智小五郎像に近いのではないだろうか。

金田一の盟友、磯川警部に扮するのは、オールバックヘヤーで早口の大友柳太郎である。

後年の多羅尾伴内ものなどに比べれば、本作はまだそれほど荒唐無稽にもなっておらず、原作イメージにとらわれなければ、これはこれで、独自の探偵犯罪活劇映画として成立するのではないかと思われる。

美人の助手同伴の金田一と言うのも、一見の価値があるだろう。