TOP

映画評index

ジャンル映画評

シリーズ作品

懐かしテレビ評

円谷英二関連作品

更新

サイドバー

愛と死の記録

1966年、日活、大橋喜一+小林吉男脚本、蔵原惟繕監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

中本印刷の写真製版担当、三原幸雄(渡哲也)は、バイクを少女にぶつけそうになり、彼女が持っていたレコードを割ってしまう。

同僚で友人の藤井(中尾彬)に金を借り、待ち合わせた相手にその金を弁償代として渡すのだが、相手の少女はそういう三原の一方的な態度が気に入らない様子。

そのことを、藤井から聞かされた幸雄は、彼女が、藤井のガールフレンドであるふみ子(浜川智子)と同じレコード屋に勤めている友だちだったことを知る。

後日、藤井とふみ子の計らいで再び会った二人は、急速に心を打ち明けあう仲になる。

少女の名は、松井和江(吉永小百合)、あだ名はバンビだという。

やがて、付き合いはじめた二人は、藤井らと共にバイクで遠出をすることになるのだが、二人きりになった幸雄の思わぬ発言から、二人の間にぎくしゃくとしたものが生まれる。

雨の中での気まずい別れの後、一旦は仲直りして、互いの愛情を告白しあった二人だったが、幸雄は、その後、職場で倒れてしまう。

彼は、幼い頃、両親を原爆で失い、自らも被爆をして、余命幾許もない白血病を患っていたのである。

事情を知った、和江の家族は、すぐにでも幸雄と別れることをすすめる。

しかし、和江は、幸雄に最後まで付いて行く決心を固めるのだが…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

「愛と死を見つめて」(1964)同様、愛情と難病テーマのシリアスな作品で、芸術祭参加作品でもある。

渡哲也も中尾彬も、ちょっと見、誰だかわからないくらい若い。

難病にかかった主人公と言うのもかなり重いテーマなのだが、さらに、結婚している和江の兄(垂水悟郎)が振ったため、自殺未遂したかつての恋人(芦川いづみ)が隣に住んでいると言う、さらに暗い設定まで用意されており、仲を深め合う二人のはつらつとした明るさとの対比を見せる。

白黒フイルムに映し出される原爆ドームや平和公園、広島球場などといった風景が、象徴的に使用されているのも見所だろう。

幸雄の面倒を見ている先輩格の男に佐野浅夫、主治医に滝沢修、和江の母親に三崎千恵子が扮している。

淡々とした演出に原因があるのか、 正直、今観て、泣ける感じではない。

ドキュメンタリーでも観ているように、わりと冷静に観れるのだ。

以前から自分の運命を知りながら、好きな女性ができてしまい苦悩する青年役を演ずる渡哲也は、拙いながら、後年のイメージとは又違った朴訥とした魅力がある。

若き中尾彬も又、後年のイメージとは全く違う、爽やかな二枚目である所に注目したい。

主役の吉永小百合は熱演だが、当時はそういう役柄が多かったせいか、意外と平凡な印象しか残らないのが惜しまれる。