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無宿(やどなし)

1974年、勝プロ、中島丈博+蘇武道夫脚本、斉藤耕一監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

二人の男の少年時代、やがて互いに大人になった錠吉(高倉健)と駒形(勝新太郎)が、同じ刑務所内で知り合う様子が紹介される。

同時に刑を終えた二人は、別々の路を歩くことになる。

錠吉の方は、ゆきのという遊女を探していたが、その女の本名は千鶴といい、既に他界したことを知る。

一方、駒形の方は、元の彼女で旅廻りの役者をやっている板東梅之丞(藤間紫)と再会を果たし、今にいい暮らしをさせてやると嘯く。

元仲間(山城新伍)と共に遊廓に遊びに出かけていた駒形は、自分が目当てだった遊女(梶芽衣子)の先客が、あろうことか、あの錠吉だったことを知る。

盗み聞いていると、どうやら、錠吉が探していた千鶴の妹が彼女で、姉のために用意してきた大金を見て、その金でここから連れ出してくれと頼んでいるのだった。

いきなり、話に割り込んだ駒形、頼まれもしないのに、勝手に、芝居小屋から軍服を拝借して軍人に化けると、遊廓で一騒ぎ起こしはじめる。

その隙に遊廓を抜け出した錠吉と女は、やくざ(石橋蓮司)たちの手を逃れ、川を泳いで何とか逃げ切るのだった。錠吉は、元潜水夫だっただけに、泳ぎが得意だったのである。

錠吉は、千鶴の夫で、自分の親分だった古本信次郎の墓参りを済ませると、彼を殺害した仙蔵(安藤昇)という男を探しはじめる。

一緒に同行していた女は、とある村祭りの雑踏の中で錠吉と別れ別れになってしまうが、偶然にも、駒形とそこで再会する。

女から、錠吉が元潜水夫だった事実を聞かされた駒形は、自ら、仙蔵と名乗って、女と宿を取り、その名前を目当てにやってきた錠吉と再び再会するのであった。

帰ろうとする錠吉を引き止めた駒形は、意外な話を持ち出す。

自分の父親が昔、バルチック艦隊の戦艦が海に沈むのを目撃して、その場所を記した地図を持っている。
ついては、その船から宝を引き上げて、二人で山分けしようというのであった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

三船敏郎を招いて「座頭市と用心棒」(1970)を撮ったように、今回は仁侠映画そのままの姿をした高倉健を招いて、勝が共演した一種のロード・ムービー風作品。

後半は、アラン・ドロンとリノ・バンチュラ、ジョアンナ・シムカスの名作「冒険者たち」(1970)そっくりの展開になって行く。
勝新が、煙草を吸おうとする健さんに自分の煙草の火を貸す所等は、ドロンとブロンソンの「さらば友よ」(1968)などを連想させる。

共に、健さんをアラン・ドロンに見立てているわけで、三船同様今回も、ゲストを持ち上げている勝新の気配りが感じられる。

健さんは、仁侠映画のイメージそのままに、寡黙で無表情の男。
対称的に、勝新の方は、開放的で調子の良い男を演じている。

梶芽衣子は、いつもとはイメージを変え、海を見ることだけを楽しみにしている、弱くていかにも頼りな気な女を演じている。

仇役となるヤクザを演ずる安藤昇、大滝秀治、中谷一郎、石橋蓮司、今井健二らは、各々、登場時間は短いながら存在感を見せる。

後半、複雑な世間のしがらみから逃れ、美しい海を舞台に、無邪気な宝探しに乗じる三人の男女の姿は、観ている方もすがすがしい。

3人のキャラクターのからみ合いだけで最後まで引っ張って行く描き方だが、「冒険者たち」を知っている人間には、大体の結末も想像できてしまうところがちょっと弱いかも知れない。

芸術祭参加作品でもある。