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曽我兄弟 富士の夜襲

1956年、東映、五都宮章人原作、八尋不二脚本、佐々木康監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

河津三郎佑泰(中野市女蔵)は、共を連れての狩りの帰り、何者かが放った矢に射抜かれて絶命する。

賊を追っていたお供の者は、賊が将軍源頼朝(片岡千恵蔵)お気に入りだった工藤裕信(月形龍之介)の手の者と知るが、その権力の前にはなす術がなかった。

裕信の甘言によって、いわれのない逆賊の汚名を着せられた佑泰の妻、満江(花柳小菊)は、幼き子供、一万(植木基晴)、箱王(植木千恵)兄弟を連れ、住み慣れた領地を逐われ、曽我の庄に住む曽我太郎佑信(中村時蔵)と再婚することになる。

父親の敵討ちのため、剣の修練に励む兄弟であったが、やがて、将軍が差し向けた梶原景時(大川橋蔵)によって、鎌倉に連れて行かれ、反逆の恐れあるとして処刑されることに。

しかし、畠山重忠(大友柳太郎)の必死の嘆願により、二人の処刑は寸での所で赦免される。

それから18年が過ぎ、兄一万は、十郎裕成(東千代之介)と名をあらためて、静かに暮していた。

一方、気性の荒い弟、箱王(中村錦之助)の方は、箱根の山寺に預けられており、明日にも剃髪して俗世から縁を切るという噂が母の元に届いていた。

しかし、箱王は、その夜、憎っくき仇の工藤裕信の姿を見、矢も盾もたまらなくなり、そのまま山から降りて、兄の元へ駆け付けるのだった。

懐かしき母親の元に、仇討ちの決意を伝えに行く兄弟だったが、今となっては夫、佑信と曽我一族に迷惑がかかると気兼ねした母親の態度は冷たかった。

一旦は落胆して戻る兄弟だったが、事情を知り、自分のことは気にするなと、自ら二人に剣を託した佑信の気持を知った母も又、二人に晴れ着を渡すのだった。

かくして、その場で元服し、五郎時致と名を改めた箱王は、兄十郎と共に、富士の裾野に刈りに訪れた源頼朝に、お狩場奉行として同行してきた工藤裕信を討たんと向うのだが、刻々とチャンスは失われようとしていた…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

「忠臣蔵」「鍵屋辻の決闘」と共に、日本三大仇討ち話として知られる逸話を、和田三造の美術設計も華麗に、オールスターで描く芸術祭参加作品。

古風な筋立てであることもあり、正直な所、今観て、ものすごく面白いという感じではないが、次々に登場する豪華な顔ぶれを観ているだけでも十分に楽しめる。

スターの東映といわれていた時代劇全盛期の頃の、『大東映』の底力を感じる作品でもある。

頼朝の息子、頼家を演じているのは、子役時代の北大路欣也。

十郎に思いを寄せる遊女、虎に高千穂ひづる、五郎の方に思いを寄せる遊び女に三笠博子が扮し、話に華やかさを添えている。

背景にいくつもの富士山が登場するが、全て、絵合成である。

印象的な夕焼け空等も同じ手法で表現してあり、全般的にリアリズムというよりも、日本画でも見るかのような絵画風の作りになっている。

本作の要は、何といっても、憎々しい仇役を演じる月形龍之介の存在感であろう。

御大、片岡千恵蔵よりも目立っているといっても良い。

兄弟を助ける大友柳太朗も得な役所であり、当時の人気振りが想像される。

当時、子供達を中心に絶大の人気を誇っていた人気若手スター、素晴らしい仇役、そして魅力的な助っ人たち。正に、スターの宝庫だった会社だからこそ可能だった映画だといえよう。