TOP

映画評index

ジャンル映画評

シリーズ作品

懐かしテレビ評

円谷英二関連作品

更新

サイドバー

スカイ・キャプテン-ワールド・オブ・フューチャー

この作品を一言でいえば、「SFパルプ雑誌のビジュアルの寄せ集め」である。

SFパルプ雑誌は、1926年の「AMAZING STORIES」創刊から始まり、大体1950年代頃まで作られていた安手の大衆小説雑誌のことである。

西部劇とか探偵ものなどのジャンルものもあったが、SFものは、半裸の女性と荒唐無稽な空想科学メカの組み合わせなど、扇情的な表紙画で大衆の好奇心を刺激し、部数を伸ばしたという。

また、フライシャーの有名な劇場用アニメ「スーパーマン」(1941〜43)などにもビジュアル的な影響を受けている。

冒頭、摩天楼に飛来する飛行ロボットは、まさしく、フライシャー版「スーパーマン」の「メカニカルモンスター」そのものだし、映画全体の時代設定、陰影を強調した色彩感覚等もそっくりである。

このフライシャーのアニメは昔、日本のテレビでも放映されていたので、ある世代にはお馴染みのもので、宮崎駿監督が「ルパン3世 さらば愛しきルパン」や「天空の城 ラピュタ」に、そっくりロボットを登場させているのも有名な話。

進歩したデジタル技術で、そうした「古き良き時代の空想科学冒険譚」を再現してみようというのが、この作品の発想だったのだろう。

ただ残念ながら、時代の変化、価値観の変化は、「昔通りの表現」をもはや許さない状況にある。

エロティックな半裸の女性がモンスター機械にさらわれ、それをスーパーヒーローが助け出す…というような男性願望中心の表現は、もう許されないのだ。

いきおい、登場する女性たちは、皆、男勝りでたくましい。

これでは、昔風のヒーローが成り立つわけがない。

近年の007シリーズのように、ヒーロー像もどこかコミカルに描くしかないのである。

登場人物も少なく、ドラマ的な厚みもない。
直線的で御都合主義丸出しのストーリーも、昔のマンガそのもの。

だから本作は、ヒーローものの形を借りた「レトロSF博覧会」「デジタルマンガ」みたいな乗りで観るのが正しいと思われる。

「ロスト・ワールド」「キング・コング」「ゴジラ」「失われた地平線」「来るべき世界」など、有名な古典SF映画を連想させるものが、次々に登場する。

「サンダーバード」に次いで、昔、テレビ放映されていた「キャプテン・スカーレット」のクラウドベースやエンジェル・インターセプターなどを彷彿とさせるメカも登場するが、何か古典SFにオリジナルがあるのかも知れない。

日本でいえば、初期手塚治虫、海野十三、小松崎茂の世界といえば分かりやすいか?

ただし、これらはマニア対象の話であって、普通の観客にとっては、このどこか不思議な世界観を楽しめるかどうかで、面白いか、そうではないかの評価は違って来るだろう。