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パンダ・コパンダ

1972年、東京ムービー、宮崎駿原案+脚本+画面設定+美術設定、高畑勲監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

お父さんもお母さんもいないミミ子ちゃん(声-杉山佳寿子)は、おばあちゃん(声-瀬能礼子)と二人暮しの元気な女の子。

そのおばあちゃんが、長崎にいる親戚の法事に出かけると言うので、今日は駅までお見送りです。

おばあちゃんは、自分が出かけてしまうと、ミミ子ちゃんが一人ぽっちで御留守番をしなくてはならなくなるので、心配で、なかなか電車に乗ろうとしません。

でも、お料理でも、お洗濯でも何でもできちゃうミミ子ちゃんは、一人暮らしなんかヘッチャラなので、おばあちゃんを電車に押し込むと、自分はお買い物をして、交番のおまわりさん(声-山田康雄)に御挨拶すると、竹林の中にあるお家に帰ってきました。

すると、何だか、お家に誰か近づいた様子。

泥棒さんかも知れないと、ワクワクして家の周囲を見て回っていたミミ子ちゃんは、小さなパンダのヌイグルミを見つけます。

喜んで、それを抱きしめてみると、何と、そのパンダの人形は生きているではありませんか。

それでも、可愛いので、家の中に連れて来ると、後から、大きなパンダが、窓から覗き込みます。

その大きなパンダこそ、小さなパンダのお父さんパンダで、小さなパンダはパン(声-太田淑子)、お父さんパンダはパパパンダ(声-熊倉一雄)という名前でした。

パパンダは、ミミ子ちゃんからお茶をごちそうになりながら、彼女には両親がいないことを知ると、自分がパパになってあげると言い出します。

ミミ子ちゃんは大喜び!
それでは、自分は、パンちゃんのママになってあげると言い出すのでした。

かくして、パパンダ、ミミ子、パンのおかしな共同生活が始まります…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

日中国交回復を記念して、上野動物園に、ランラン、カンカンという二頭のジャイアントパンダが、中国から初めて贈られてきた年の「東宝チャンピオン祭り」の一本として、「ゴジラ電撃大作戦(怪獣総進撃)」と「怪獣大奮戦ダイゴロウ対ゴリアス」と一緒に公開された作品。

原画を担当したのが、大塚康生と小田部羊一、声優として、山田康雄も参加しているとあっては、後年の「ルパン3世」や「となりのトトロ」の原点がここにあると言っても過言ではない名作アニメ。

当時、宮崎駿や高畑勲らが参加していたAプロダクションが、独自に企画していた「長靴下のピッピ」の主人公キャラクターや舞台設定を、ほぼそのまま使用している。

好奇心旺盛で、独立心もあり、どんなものに出会っても物おじせず、ポジティブに受け止める女の子ミミ子ちゃんは、「トトロ」のメイやさつきであり、パパンダの性格や形態は、正にトトロの原型そのものである。

パパンダが、ミミ子のお父さんになってやると告げた時、喜んだミミ子が、パンちゃんと一緒に、パパンダの大きな胸にしがみつく様は、「トトロ」でメイとさつきが、トトロの胸にしがみついて、天空に飛び上がる有名なシーンと全く一緒。

目を見開き、歯をむき出して、ニッと笑うパパンダの笑顔は、トトロそのものといって良い。

物語後半、散歩に出かけたパパンダとミミ子が、急に姿が見えなくなったパンちゃんを必死に探す展開も「トトロ」そのままである。

大人にあれこれ指図されるのではなく、自分がママになって、一家を切り盛りすると言う、女の子のママゴト幻想をそのまま物語にしたような、楽しく明るい宝石のような世界。

今の精密化したアニメから比べると、シンプルそのものの画風なのだが、まったく安っぽい感じはない。
むしろ、そのシンプルさが、観る者の想像力をかき立ててくれる豊かさだといえよう。

幼児から大人まで、万人にお薦めしたい作品である。