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怒りの海

1944年、東宝、八木沢武孝+山形雄策脚本、今井正監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

大正10年、号外が街を走り抜ける。
ワシントン条約により、各国の主力戦艦の保有量が制限されたため、日本でも何隻もの戦艦を廃棄せねばならなくなったのだ。

海軍省でも、何隻もの廃棄艦の発表が記者たち相手になされていた。

陸奥、土佐、天城、加賀…。

技術研究所の主任、平賀譲(大河内伝次郎)は、自分達が苦心して作った主力艦を、むざむざ同じ海軍の手で沈めなければならないことに納得できず無力感を見せる山岸(真木順)ら部下たちを叱責しながら、新しい11、12号戦艦の設計に集中するよう説得するのであった。

一方、1万2000人の将兵たちも現役を退くことになり、吉野(河野秋武)ら青年将校たちは、うわべばかりの平和主義に浮かれる世間の風潮を嘆いていた。

吉野は、盟友浅香(黒川弥太郎)らと共に、入院中だった加藤閣下を見舞いに行く。
その病室で、彼らが偶然出会ったのが、同じく見舞いに訪れた平賀であった。

吉野らが退室した後、平賀は加藤閣下に、これからは主力艦並みの能力を持つ巡洋艦を建造し、「量より質で勝負してみせる」と約束するのだった。

昭和2年、3000トン級以下の巡洋艦で、5000トン級以上の戦艦並みの力を持つ船を建造しようとする平賀の理念も、立ちふさがる厚い現実の壁には手も足もでない状態が続いていた。

特に、汽罐を軽くするのは困難と、強く対立する高木(志村喬)の態度は強固であった。

平賀の娘、みつ子(原節子)は、連日無理を重ねる父親の身体を心配し、ある日曜日、コンサートへの同伴を頼んでみるのだった。

不承不承、娘に付き合ってコンサートに出かけた平賀は、交響曲を聞く途中、新しい設計のヒントを掴み、そのまま研究所へ出向くと、部下たちを召集するのだった。

図書館に資料を探しに言った平賀は、同じく、子供達と遊んでいる時にアイデアが閃いたと言う高木とばったり出会い、互いの胸襟を開き合うのだった。

やがて、新鋭巡洋艦の試作、夕張が完成する…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

様々な困難を前に、新しい巡洋艦を建造した実在の造船監、平賀譲の半生を描いた「プロジェクトX」風の作品。

偉人伝的な描き方なので、ドラマとして特にひねりがあるわけでも、映画的なクライマックスが用意してあるわけでもないが、前半部分で、円谷英二の手になる多くのミニチュア特撮を楽しむことができる。

造船所のパノラミックな俯瞰描写、練習機の墜落シーン、廃棄艦の爆破沈没シーン、嵐の日の訓練航行のシーンなど、特撮的な見所は多い。

大河内伝次郎は、ベテラン技術者としての風格と研究熱心さを良く演じているし、若き原節子は可憐である。

地味な、海軍省の宣伝映画と言うか国策映画ではあるが、結構、男性はこういうタイプの研究者の苦闘物語は好きなのではないだろうか。