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学園祭の夜 甘い経験

1970年、奥山長春脚本、堀川弘通監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

高校最後の学園祭が迫るある日、優等生で放送部のキャプテンでもある林牧子(鳥居恵子)は、同じ秀才仲間の奥田(内田喜郎)から、その行動力を買われ、学園祭の実行委員長に推薦される。

さっそく、牧子は、同級生ながら、遊び人っぽくて他のみんなから孤立した感じの水野(立花直樹)に、学園祭で、いつも吹いているトランペットを披露してくれないかと依頼するのだが、その代わりに、牧子に演劇部の芝居に参加してくれないかと逆に誘われることになる。

迷った末、好奇心から、その誘いを受けた牧子は、演劇部のキャプテンで、3つ年上という変わった経歴の神山(沖田駿一)はじめ、それまで付き合っていた優等生仲間とはひと味違った、ちょっと遊び人風の級友たちの魅力に惹かれはじめる。

芝居の練習中、いきなり、生まれて初めてキスを強要されたり、遊び人たちがたむろするおしゃれな店に連れていかれたり、戸惑いながらも、水野の暮らし振りに惹かれていく牧子は、どうしても、東大を一緒に目指している秀才型の奥田と水野を比較してしまうのだった。

その奥田の方は、自分が秘かに思いを寄せている牧子が、どんどん、水野たち、遊び人の仲間に染まっていくのを苦々しく観察していた。

やがて、学園祭が始まり、盛り上がった末の夜、牧子は、飲みなれぬ酒に酔ったこともあり、学校に泊まることにするのだが、一緒に泊まった水野と初めての経験をすることになる。

翌日、冷静になって、自分の昨夜の行動が怖くなった牧子は、家に帰らず、街をさまよい歩き出す。

やがて、学校にもでてこなくなった牧子は、水野との付き合いにも自信が持てなくなり、距離を置こうとするが、数カ月後、自分が妊娠してしまったことを知り、その水野にすがりつくしかない自分に気付くのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

何やら、怪し気なタイトルとは裏腹に、真面目な青春ものである。

露骨な性表現等はほとんど出て来ない。

むしろ、青春文芸もの等に近いタッチと言った方が正しいかも知れない。

まじめなお嬢様タイプだった少女が、自分が知らない環境に好奇心から近づき、最初は面白がるものの、急に冷静になって、今度はそういう新しい環境に染まってしまった自分に恐怖すると言う、不安定な青春期特有の少女心理を巧く表わしている。

主役を演じている鳥居恵子始め、若者を演じている役者たちは、総じて棒読み口調のしろうと臭い演技なのだが、その拙さが逆に、本作の、どこか妙なリアリティにつながっているように感じられる。

金持ちのボンボンらしく、自由に遊び暮して、あれこれ情報やセンスは持っているものの、どこか無責任な部分がある水野。

ガリ勉型でプライドも高く、ずる賢さや狭量さ、嫉妬深さなど嫌な面も持ち合わせる奥田。

17の時に家を出て、ブラジル辺りを無銭旅行していた末、今は一人暮らししている自由人と言うか変人っぽい神山。

みんな各々、確かに1970年頃に存在した高校生の典型像である。

ラストの、蒼い森の中に消えていく、牧子と水野の姿が美しくも暗示的で印象に残る。

余談だが、本作に出ている主だった役者たちは、皆、何らかの形で特撮作品にも縁のある人々ばかり。

牧子役の鳥居恵子は、仮面ライダー藤岡弘の元奥さんだった人。
水野役の立花直樹は、「ジャンボーグA」や「ザ・カゲスター」でお馴染みの人。
奥田役の内田喜郎は、「大怪獣ガメラ」で、ガメラに助けられる少年。
神山役の沖田駿一は、「ウルトラマンA」の山中隊員である。