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エノケンの千万長者

1936年、P.C.L.山本嘉次郎監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

江木三郎(榎本健一)は、大富豪の父亡き後、教育のため田舎の中学へ入学させられ、13年間、世話係の加藤(中村是好)に質実剛健の精神を叩き込まれるが、東京の大学に入るため、丸九デパートの社長をしている叔父 (柳田貞一)から上京を勧められる。

すっかり、田舎のバンカラ気風に染まり、顔中ヒゲヅラのまま叔父に出会った三郎は、もっと金持ちらしい生活態度に改めるように注意される。

さっそく、三郎の家庭教師の選定が丸九デパート社長室で始まるが、採用されたのは、何と、婦人服売り場で怪しからん振る舞いをしたとして、警備員に引っ張って来られた酔っぱらいの不良、三田(二村定一)であった。

三田は、真面目に勉強しようとする三郎に、色々悪い遊びを教えるのが役目であった。

一方、三郎が入った大学では、各運動部が揃って、色々施設を寄贈してくれる金持ちの彼を利用しようと、特別待遇の部員として三郎を入部させるのであった。

さらに、高校時代からの級友で、互いに女には近づかないと約束しあった小川(如月寛太)と太田というバンカラ連中から、そのだらけた生活態度を監視される始末。

三田は、バー・ジョーカーの女給お雪(高清子)と結婚して店でも持とうかと夢見ていたが、毎日、湯水のように金を使える生活を続けて行く内に、遊びに飽き、三郎の家庭教師としての意欲を失ったとして、首を言い渡される。

そのことを知った三郎の説得もあり、叔父は、三田をデパート専属の歌手として、新たに雇い入れることになる。

あまり気の進まない見合いをさせられるはめになった三郎は、その現場を小川と太田に見つかり、気まずくなって逃げ出した先は、お雪の妹おとし(宏川光子)が勤めている街のレストランであった。

偶然、そこで開かれていた運動部の会合に紛れ込んだ三郎は、そこでの議題が、金以外には無能な自分を部から追い出そうと言う内容であることを知り激昂するが、喧嘩を止めに入ったおとしの優しさに触れ、二人は恋に落ちるのことになる。

おとしは、単なる金持ちと結婚するのは、いかにも金目的のようで嫌だ、貧しくとも三郎に働いて欲しいと言う。

そのことを三郎から相談された三田は、自分と同じように、丸九デパートにこっそり入社すれば良いのではないかといいだすのだが…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

金持ちの苦労話という、庶民からすれば夢物語を、エノケンが楽しそうに演じている。

エノケンが、金目的のため利用されているだけとはいえ、大学の運動部で、水泳やラグビー、野球などをしている姿が楽しい。

又、冒頭の髭もじゃ顔から後半の女装までといった変装振りや、「♪狭いながらも楽しい我が家〜♪」という有名な「私の青空」の替え歌など、いくつかの明るいジャズメロディーを披露してくれる。

後半は、二村定一の歌声を中心に、デパートの催し物会場を舞台に、ファッションショーに見立てたミュージカル風の見せ場も用意されている。

「遊びは、金がないのを工面してやるから面白い」とか「本当の恋は、金では買えない」などという教訓めいた主張も感じられるが、全体としては、明るく楽しく若々しい、ミュージカルコメディになっている。