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新諸国物語 紅孔雀 第一篇 那智の小天狗

1954年、東映京都、北村寿夫原作、小川正脚本、萩原遼監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

網の長者(吉田義夫)に詰め寄る信夫(しのぶ)一角(三条雅也)。
どうやら、元海賊だった長者に、「紅孔雀」の鍵の在り処を問いただしているらしい。
長者は知らぬと言う。

海辺の崖で釣りを楽しんでいた代官、那智嘉門(有馬宏治)の息子で「那智の小天狗」の異名を持つ美剣士、小四郎(中村錦之助)は、何ものかに連れ去られようとしていた見知らぬ少女久美(高千穂ひづる)を助けるが、その直後、物陰から一角が放った石礫に額を割られてしまう。

帰宅した小四郎が目撃したのは、父親嘉門に対し、あなたは昔、御法度であるはずの海外旅行をした上月伊織という人物だろうと詰問する網の長者の姿であった。

長者が帰宅した後、嘉門は、小四郎を招き寄せ、自分は、30年ほど昔、海外へ渡り、そこにあったキリスト教の教会の中で、不思議な人物に出会い、莫大な財宝の眠る、赤い翼の紅孔雀の地図が世界一不幸な政治を受けている日本にあるので、それを開ける鍵を、正直な心を持つ自分が託されたという話を打ち明けるのであった。

しかし、肝心の鍵を取り出そうとした嘉門、大切に隠していたはずの鍵が紛失していることに気付く。

その鍵を盗み撮っていたのは、妖術使いの一角であった。

彼は網の長者の元に現れると、その鍵を、強欲な長者に譲る代わりに、一人娘の久美を嫁にもらいたいと持ちかける。

欲に負け、あっさり承知した長者は、しかし、その夜、寝床に忍ばせていた鍵が何ものかに盗まれたことに気付く。

屋敷内を探していると、一人の見知らぬ孤児が寝ているではないか。

翌日、簀巻きにされて海に投げ込まれそうになったその子供を救ったのは、又しても、小四郎であった。

その子供は、足が早い風小憎(山手弘)と名乗り、後日、紅孔雀の鍵がないと、久美が一角と結婚させられると知った彼は、鍵を盗んでいた一角を探し出して、その懐から、見事に鍵をスリ取って戻ってくる。

一方、小四郎は、橋のまん中に寝転んでいたヨッパライの浪人に遭遇する。

家にやってきて、酒を無心するそのヨッパライの顔を観た召し使いの妻、稲(松浦築枝)は、その浪人ものこそ、小四郎と姉幾重(西条鮎子)の兄、主水(大友柳太郎)だと言い張るが、本人は「五升酒のしょうじょう」だと名乗るのだった。

紅孔雀の鍵を、風小憎から受け取った小四郎と久美は、一角と長者一味の襲撃に会い、崖の上での壮絶な戦いが始まるのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

NHKラジオの人気番組だった「新諸国物語」の「白鳥の騎士」「笛吹童子」に次ぐ第三話「紅孔雀」の映画化で、同じ年に封切られた東宝「ゴジラ」を凌ぐ大ヒットを記録して、一躍大東映になる礎になった子供向け伝奇時代劇。(「白鳥の騎士」は新東宝、「笛吹童子」は東映で各々映画化)

本作は、「紅孔雀」五部作の内の第一編に当るもので、主要人物の紹介編と言った所。

岸井明扮する弘念和尚などといったキャラクターも、ちらり登場する。

煙と共に姿を現したり、消したりと言う一角の妖術表現を始め、御都合主義のストーリー展開は、さすがに今観ると古めかしいと言うしかないが、ヒーロー、ヒロイン、子供、助っ人といった子供向けヒーローものの基本形は全て揃っており、そのシンプルな勧善懲悪の展開が、当時の子供達を夢中にさせたことは容易に推測させられる。

網の長者に扮している吉田義夫は、テレビ「悪魔くん」のメフィスト役でも有名だが、本作を含む東映娯楽版でも代表的悪役スターだったようだ。
凄いメイキャップでギョロ目を見開き、迫力満点の悪役を演じている。

ちなみに、本作に登場する風小憎を素材にしたテレビ特撮ドラマ「風小憎」で、一躍お茶の間の人気者になったのが、主役を演じた山城新伍である。