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上を向いて歩こう

1962年、日活、山田信夫脚本、舛田利雄監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

少年鑑別所から脱走した二人の少年、川西九(坂本九)と片山良二(浜田光夫)は、たまたま近づいてきた車にわざとぶつかり、病院に連れて行かそうと企むが、その運転者は少年保護司の資格を持つ運送業者の長井(芦田伸介)だった。

長井は、二人をかばって病院へ入院させるが、彼の娘の紀子(吉永さゆり)が見舞いに来た時、遅れて少年課の刑事(大森義夫)を連れてやってきた長井の姿を見た良二の方は病院から逃げ出してしまう。

ドラマーに憧れていた良二は、ドラムを習っていた牧(梅野泰靖)が働くジャズ喫茶に逃げ込むが、牧はポン中になっており、店は松本健(高橋英樹)という青年が率いるチンピラたちに牛耳られていた。

一方、大勢の不良少年を自分の所で働かせながら更生させていた長井運送店に勤めることになった九ちゃんだが、そこへ現れたのが長井にかつて世話になっていた健、良二の治療代を出せという。

恩を仇で返すような健の態度に、運送店で働く元不良たちは反発するのだが、長井は黙って金を渡して帰す。

そんな良二をしり目に、九ちゃんは真面目に運送店で働くようになり、足が不自由だった紀子の妹の光子(渡辺トモコ)を立ち直らせようと、積極的に外へ連れ出すようになる。

ドラマーになりたいという夢を持ちながらも、悪い環境から抜けだせない良二。
目的を見つけられないながら、与えられた仕事を懸命にこなそうとする九。

相反する道を歩み始めたかに見える二人同様、足掻いているもう一人の若者がいた。

健である。

彼は、裕福な父親(清水将夫)の妾の子として育てられ、ふとした行き違いから、兄まさゆきを傷つけてしまい、家を飛び出した事情があったのだ。

しかし、根は真面目な彼は、賭け事で儲けた金を、大学受験のために貯えていたのだった。

そうした彼の勤勉さに気付いた紀子は、まさゆきと親しいこともあって、二人を仲直りさせようとするのだが…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

あまりにも有名な坂本九のヒット曲「上を向いて歩こう」をタイトルに頂き、一見、爽やかで軽いアイドル音楽映画か?…と思わせるが、実は、不遇な環境にありながらも懸命に生きていこうと苦悩する若者たちの様子を描いた、なかなか真面目な青春映画になっている。

クライマックスで不良同士が対決するシーンなどは、「ウエスト・サイド物語」(1961)の影響もあるのではないだろうか。

若く絵に描いたような二枚目の高橋英樹が見物。

劇中、チンピラたちのやっているテレビ賭博が興味深い。

要するに、テレビで実況しているスポーツを賭の対象としているのだが、ボクシングや相撲の柏鵬戦(大鵬、柏戸)が登場する所に時代を感じさせる。

キユーピーこと石川進やパラダイスキングの面々も当然ながら出演している。

ちょっと意外な所では、ポン中になったドラマーの牧の愛人役として、テレビのお母さん役などで昔良く見かけていた高田敏江が出ていたりする。

最後に登場するロケ地は、東京オリンピックのため建設された代々木競技場か?

日本中がはつらつとしていた時代の、勢いを感じる作品である。