1959年、東宝、蓮池義雄脚本、本多猪四郎監督作品。
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西鉄ライオンズを日本一に導いた若き大投手、稲尾和久(本人)は、母親(浪花千栄子)と姉を連れて、東京見物に来ていた。
皇居、靖国神社、たちまち少年ファンたちに取り囲まれて、稲尾はサイン攻め。
それを見守り、嬉しそうな母親。
物語は、稲尾が生まれた昭和12年大分県別府へと戻る。
魚の行商をしていた稲尾かめの(浪花千栄子)は、道ばたで急に産気づく。
臨月まで働いていたのである。
かくして、5人兄妹に新しい男の子和久(伊東隆)が加わることに。
彼は、小学生になると、野球に興味を持ち、地元の野球グループに参加、年齢に似合わぬ強肩を発揮し始める。
やがて、緑丘高校に進学した和久(吉田光男)は、野球部に入り甲子園を目指すも、ワンマンチームとあって、予選で敗退。
しかし、その並外れた才能を見抜いた南海他、数球団が彼をスカウトしに訪れる。
迷う彼に、父親久作(志村喬)は、地元、九州の西鉄を勧めるのだった。
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「神様 仏様 稲尾様」と称された、元西鉄ライオンズの名ピッチャー稲尾和久の半生をフィクションも交えて描いた作品で、子供時代から、昭和33年の日本シリーズで、巨人軍に3タテをくらい、絶体絶命の状態になったライオンズが、奇跡の4連勝で逆転日本一になるまでが描かれている。
子供時代の稲尾を演ずる伊東隆は、1955年、本作で構成を担当した菊島隆三が脚本を書いた「男ありて」で、姉役の岡田茉莉子に可愛がられていた「恥かきっ子」照男役の子。
「男ありて」同様、志村喬と父子関係を演じている。
その少年稲尾が、友人たちにけしかけられて、一人海に小舟を漕ぎだし、嵐に遭遇。
久作が、独り船を漕いで救援に来るシーンが、東宝お得意の特撮で描かれる。
音楽は、夏の甲子園のテーマソング「栄冠は君の輝く」でお馴染みの古関裕而、爽快なテーマ曲も魅力である。
高校生になった稲尾(吉田光男)の級友栗原を演じるのが江原達怡、彼らがバスで出会う地元の美少女が白川由美、稲尾を幼い頃から可愛がっていた松源の主人が藤原鎌足、稲尾の二人の兄を演じているのは、堺左千夫と山本廉という悪人顔コンビ、何かこの二人が不祥事でも起こすのではないかと、ハラハラしながら観ていたが、普通の真面目な役だった。
映画的には、父親役の志村喬と母親役の浪花千栄子が泣かせる演技を見せる前半部分が見所で、稲尾本人が登場してくる後半からは、スタンドから撮った記録フイルムが多くなり、面白さはやや減少する。(ミスター長嶋のランニングホームランなど貴重な映像は観れるのだが)
「何と、申しましょうか…」の名調子で有名だった解説者、小西得郎氏の登場も珍しい。
本作がデビュー作品だったらしい星由里子、画面上では確認できなかったのが残念。
