TOP

映画評index

ジャンル映画評

シリーズ作品

懐かしテレビ評

円谷英二関連作品

更新

サイドバー

颱風とざくろ

1967年、東宝、石坂洋次郎原作、井手俊郎脚色、須川栄三監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

女子大生で、テニス部に所属している桑田英子(星由里子)は、コーチとして招いている先輩の坂本一雄(中山仁)が気になっていた。

坂本の家に遊びに行った英子は、産婦人科の父親(清水将夫)、母親(高峰三枝子)、弟二郎(黒沢年男)、妹けい子(いしだあゆみ)など、一雄の家族とも仲良くなり、自分の家の職業が「葬儀屋」であることも正直に告白していた。

そんな英子を迎えにやって来た弟の貞三(田村亮)は、何と、霊柩車で坂本家に乗り付け、たちまち、皆は意気投合することになる。

しかし、幸せは長く続かず、クリスマスの日、デートの約束よりも、人数不足の友人たちの冬山登山のパーティへ参加することを優先させた一雄は、不慮の遭難にあい、帰らぬ人となる。

一雄と結ばれることを信じていた英子は、茫然自失の状態になるが、やがて、月日は流れ、彼女はテレビ局へと就職し、それなりの大人の女性へと成長していく。

そんな英子は、久々に一雄の墓参りに行った時、その墓のすぐ横で昼寝をしていた二郎と偶然にも再開する。

いつしか英子は、大人になった二郎に兄の面影を重ねるようになっていくのだった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

東宝創立35周年記念作品の一本。

前半部分では、石坂洋次郎原作ものらしく、あっけらかんとした若ものたちの性表現が描かれていく。

女子テニス部の練習の後、シャワー室を占領していた英子たちに遠慮して、去ろうとするコーチの一雄に対し、女の子たちはからかい半分で、一緒にシャワー室を使用しても良いと告げる。

それではと、裸になった一雄が堂々と入ってきたので、女の子たちは裸のまま、立ち往生状態になるというシーン。

桜井浩子や菱見百合子といったウルトラシリーズで有名になる若き女優たちが、このシャワーシーンに登場している。

また、公開当時の予告編にも登場したが、星由里子が亡くなった一雄を偲んで、一人、部屋で胸をはだけるシーンや、一雄の遺品である日記を切り刻んで御飯にまぶし、お茶漬けにして食べてしまうシーンなど、印象深い所がある。

後半は、失意の日々から緩やかに立ち直った英子が、二郎と付き合いはじめ、新しい人生を歩み始める様子が描かれていくが、そこに、ヤブさんと呼ばれ、坂本一家と付き合いのある南原宏治演ずる陽気な医者と、その坂本医院で自殺を計ろうとした妊婦役の池内淳子が付き合うようになるエピソードなども挟まっている。

英子の両親を演ずるは京塚昌子と宮口精二。
他に、その桑田家の伯父役として新聞社の論説委員をやっている謙吉(伊志井寛)と、その妻直子(森光子)など、脇を固めるベテラン陣も頼もしい。

恋人の死という衝撃の体験を通過することで、娘から一人前の女性へと精神的に成長する主人公の姿を、決して変に深刻振るのではなく、それなりに明るさ、軽やかさを交えた筆致で描いているのは、原作となった石坂文学の特長である陽性的な所からくる部分もあるだろうし、監督のセンスによる所も大きいようにも思える。

登場するキャラクターたちが、基本的に明るく前向きで、飄々とした風に描かれているのが好ましい。

若き中山仁も典型的な二枚目なら、その弟を演ずる黒沢年男も、いかにも不器用そうで頭も悪そうなのだが、人好きのする憎めない二枚目半的キャラクターを巧く演じており(地か?)、ショートカットで、まだふっくらした容貌と、くりくりした丸い目が印象的だったいしだ・あゆみと共に、こちらも印象的。

あまり世間的に知られていない作品なのが惜しいくらいだ。