1943年、東宝映画、八住利雄+山形雄策脚本、衣笠貞之助監督作品。
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「起ち上がる印度の為に 製作者一同」
「イギリスは、インドを中心に悪辣の限りを尽くしていた」…と字幕が出る。
昭和14年頃、東京のインドクラブに全国の在日インド人が集結し、反英に関する代表者会議を開こうとしてた。
そんな中、クラブ管理人のバ-サントラル(菅井一郎)が、英国大使館より呼び出しを食らう。
実は、バ-サントラルは、大使館のグレーブス書記官(斉藤達雄)のスパイであった。
バーサントラルへの新しい指令は、ビールプール王国のナリン王子、今はラタンと名乗りサイゴン、バンコク、シンガポールなどで、インド独立の中心的存在となっている男が、秘かに日本に来ているので、その所在を探し出して欲しいというものだった。
バ-サントラルは、東京のインド人の中核的存在カパデア商会にも足を運び、そこを訪れたアタールというインド人に目をつける。
アタールは、バンコクで開かれる独立気勢大会へ出発する予定であったが、カパデア商会で出会った日本の半英同盟代表浅野(志村喬)に誘われ、丸の内にあるその本部を訪ねたところで、バーサントラルから連絡を受けていた英国大使館の車に拉致されてしまう。
その現場を偶然見ていたのが、リットー製作所の社員で、ラタン(長谷川一夫)を自宅に匿っていた立花(佐山亮)であった。
その頃、ラタンは、立花の自宅で、彼の姉(入江たか子)に日本文化の素晴らしさを積極的に学びたいと伝えていた。
大使館に幽閉されたアタールは、拷問を受け、ラタンの居所を聞き出そうとされるが、一言も漏らさぬまま死んでしまう。
しかし、狡猾なグレーブスの入れ知恵により、バーサントラルは、代表者会議にラタンをおびき寄せる事に成功。
帰宅時、あらかじめ英国側が用意しておいた車で誘拐しようとするが、かつて王宮に勤めていたジャベリのとっさの助けもあり、間一髪、ラタンは車から脱出に成功する。
同じ代表者会議に出席して別路帰宅していたインド人キショール(森雅之)は、駆け付けてきた立花から帰宅せぬラタンの事を知らされるが、妻のキサ(轟夕起子)が、足を負傷しながらも、かろうじて逃げ戻ってきたラタンを発見するのであった。
しかし、捕らえられたジャベリも拷問を受け死亡、バーサントラルの策略にハマってキショール邸に呼出されたラタンは、待ち伏せていた英国人たちに取り囲まれ、そのまま大使館へと連れ去られるのであった…。
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長谷川扮する抵抗派の王子のセリフを借りて、「我々は武器を持たないから弱いのだ」という主張を強調する事で、武力闘争を正当化しようとしているプロパガンダ映画。
セリフの必要でない画面に何人かのインドらしき人が出演している他は、大半のインド人役は日本人俳優である。
英国人役も同様で、セリフのある主要人物は全員、日本人が演じている。
サリーをまとった轟夕起子が、見ようによっては、インド人女性に見えなくもない…といった程度。
バーサントラルやグレーブスらの、いかにもわざとらしい悪役振りも滑稽なら、長谷川一夫のアジテーション演説やそれに喝采し奮い立つインド人たちの様子もいかにも芝居じみて見える。
はっきりいって、ドラマ的な面白さは希薄といって良い。
アクションなども全くなく、地味な謀略映画といった感じだろうか。
拉致されたラタンを救おうと、大使館に集結したインド人たちが、唄を歌って抵抗する描写や、ガンジーの絵姿が登場しているのに、最後が「武器を持って戦え!」では、チグハグな印象がぬぐいきれない。
