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七つの海 前後編

1931年、松竹蒲田、牧逸馬原作、野田高梧脚色、清水宏監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

前後編からなる。

前編「処女編」

貴族階級で富豪の息子、八木橋武彦(岡譲二)が、洋行先のイギリスから列車に乗って東京駅に帰ってくる。

ディリー・メールの女性記者、曾根弓枝(河崎弘子)は、取材のため訪れていたスポーツ店経営の宗像一郎(結城一朗)から、隣で洋服店を営んでいる伯父の山萬(新井淳)を紹介される。

全員、付き合いのある八木橋家からガーデンパーティへの招待を受けていたが、気が進まない様子。

しかし、弓枝は、他の用事のついでに立ち寄る事になる。

この時、彼女に目をつけたのが八木橋武彦、後日、彼女に言葉巧みに近づき、強引に関係を結んでしまう。

高円寺に、病身の父親(岩田祐吉)とその看病に明け暮れる姉三輪子(若水絹子)、さらに幼い妹、百代(高峰秀子)と長家暮しをしていた弓枝は、帰宅後、その事を父親に聞きただされ泣き崩れる。

弓枝には心に秘めていた、八木橋譲(江川宇礼雄)という武彦の従兄弟に当る男性がいたのだが、もう、彼との付き合いはできなくなってしまったからだ。

逆上した父親は病身であるにもかかわらず、八木橋家へ抗議に出かけるのだが、そのまま無理がたたって亡くなってしまう。

さらに、その死に絶望した姉美輪子は精神のバランスを崩し、そのまま病院へ入院する始末。
その治療代もバカにならない。

金に困った弓枝は、譲の説得も聞かず、武彦との結婚を決意するのであった…。

後編「貞操編」

武彦との新婚旅行で、大阪の甲子園へ出かけた弓枝は、その列車の中で、今後、互いの寝室は別にする事、一日10円以上の小遣いをもらう事など、およそ夫婦らしからぬ約束を武彦にさせる。

後ろぐらい気持ちがある武彦は、その言いなりになるしかない。

かくして、弓枝は、八木橋家で、家族との関係を遮断し、金は無尽蔵に引き出すという、彼女一流の復讐劇を開始するのであった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

前後編合わせて150分以上という無声映画の大作。

全体的に静的な構図が多く、白黒ながら、各画面は綺麗に撮れている。

字幕が読みにくい事、俳優に馴染みがなく、役柄が判別しにくい事などもあり、ストーリーの細部に関しては、正直良く分からない部分もあるのだが、何となく、おおまかなストーリーはといえば、一人の女性の復讐と、愛する男への忠義立てである。

傲慢な富豪に一瞬にして身を汚され、家族をも崩壊させられてしまった職業婦人の身体をはった復讐劇とは、さすがに古めかしい翻案ものみたいで、時代を感じる内容なのだが、それなりに最後まで見せるものはある。

特に、女性には受けるのではないか。
今でいうと、愛憎渦巻く昼メロといった所だろうか。

4、5才児の百代を演じている高峰秀子は、この時点でも、一応演技をしているのが凄い。

雪の降る夜、自暴自棄になり酒で酔った譲を、一人、道で待ち受けている所など印象的である。

女優陣が、皆、細面で美人揃いなのにも驚かされる。
個人的には、美輪子役の若水絹子という女優に惹かれた。

入院したという設定で、途中から登場しなくなるのが惜しいくらいだ。